音楽科創作領域への現代音楽理論の援用
信州大学教育学部紀要 = Journal of the Faculty of Education, Shinshu University / 信州大学教育学部紀要編集委員会 編 (116) 2005.12
(1)サウンドスケープ、(2)ミニマル・ミュージック、(3)即興と偶発性、(4)図形楽譜という現代の音楽理論の概念を導入して、新たな教育実践の方向性を提案する論文。
これら概念が音楽創作の領域でどのように活用されうるかを探り、それぞれの教育的価値や実践的な応用例を示している。例えば、(1)サウンドスケープは身の回りの音への意識を高め、(2)ミニマル・ミュージックは最小限の素材の反復と漸進的変化というシンプルな要素で複雑な響きを作り出すことを可能にする。(3)即興と偶発性は、その場で音を生み出すことや不確定な要素を取り入れることを可能にし、(4)図形楽譜は、従来の五線譜では表現しにくい音楽を記譜し、自由な解釈を促す。
これらの活動において、コンピュータは、ミニマル・ミュージックの作曲や図形楽譜の作成、MIDIによる演奏など、音楽制作を容易にする重要な支援ツールとして活用される。さらに、バリ島のケチャのような民俗音楽の構造を取り入れることで、リズムパターンや複数のモチーフを重ねることを学び、児童生徒が自律的かつ創造的な音楽表現能力を育むことが目指される。