負債メタファー
事業を早く前進させるために借入は有用な一方,返済を怠ると利子が膨らみ,収入を打ち消すようになる.作業と進捗をこの比喩で捉えるいくつかの負債メタファーがある.具体的には,技術・理解・認知的経験を先送りした仕事の高速化は有用な一方,それらの後追いを怠ると,次第に作業効率が落ちて作業あたりの進捗が落ちるようになる,という説明である.
概要
適用条件
負債メタファーは借入したものが将来の仕事で再利用される場合において符合する.
技術的負債/理解負債であれば,成果物が使い捨てであれば,負債ではなくオフロードによる効率化とみることが適当な場合も考えられる.
認知的負債も同様に考えられるが,借入対象が作業者の認知プロセスであるため,その切り分けが難しい.
詳細
技術を「借入」して作ったプログラムを理解せず放置すると,作業という「収入」を加えても,「利子(プログラムの分からなさ)」に埋もれて「手取り(進捗)」は残らなくなっていく
1. 借入したら事業をより早く前進させられるように,技術を前借りすればソフトウェアをより早く完成させられる リスクを取れるなら,得られる経験・学習の観点においてリリースを早められる利点がある
次第にプログラムから知識が失われ,進捗を生むために要する作業時間は長くなっていく
理解を「借入」して得た成果物の上で仕事を続けていると,作業という「収入」を加えても,「利子(対象の分からなさ)」に埋もれて「手取り(進捗)」は残らなくなっていく
1. 借入したら事業をより早く前進させられるように,理解を前借りすればソフトウェアをより早く完成させられる リスクを取れるなら,得られる経験・学習の観点においてリリースを早められる利点がある
2. 作業者は借金を返済するように,キャッチアップ(仕組みの理解や再現の練習)を行う必要がある 次第に仕事環境から知識が失われ,進捗を生むために要する作業時間は長くなっていく
認知・思考・判断の経験を「借入」した状態で仕事を続けていると,作業という「収入」を加えても,「利子(認知的経験の不足)」に埋もれて,「手取り(進捗)」は得られにくくなっていく
1. 外部ツールなどで経験を前借りして作業すれば,未経験の仕事でも素早く達成できる
2. 作業者は借金を返済するように,作業の反復練習などにより経験を補う必要がある 3. 経験の回収を怠れば,その作業は継続的にツールに依存し,新たな進捗が生まれにくくなる. 仕事に要する認知・思考・判断能力が次第に失われ,積み上げを伴う新たな進捗が次第に生まれにくくなってくる
認知的負債と認知的オフロードの切り分け
ツールや他者に外部化された認知活動について,その上達が将来の作業において有用であり,かつ,人間側に再構成されていない場合は,認知的負債として捉えられる.
他方で,外部化しても,人間側に判断基準・理解・責任・再現可能性が残るのであれば,利子を伴う負債ではなく,認知的オフロード(高速化や並列化など,認知資源の効率利用に向けた外在化)として解釈できる.