法学部のグループディスカッション対策
ここでは、東京大学法学部推薦入試の二次試験で行われている、グループディスカッションの対策方法について解説します。東大推薦入試で行われている「グループディスカッション」は、他大学の法学部AO入試で広く行われており「法学部的な考え方や思考ロジック」で発言ができるかどうかが最も重要です。最後におすすめの自習法を紹介しているので、ぜひ最後まで読んでください。
東大法学部グループディスカッションの概要・所要時間
毎回2グループに別れて議論が行われます。
1グループ9人→90分
2020年度入試は一次試験合格者が14名のため、7人1グループの可能性が高いと考えられます。
1.「聞く力」を大切にしよう
この項目では東大法学部のグループディスカッションで最も重要な「聞く力」について取り上げます。東大推薦入試の募集要項で記されている東大法学部の「求める学生像」から、グループディスカッションで何が審査され、何を意識して臨めば良いのかを解説しています。
まず、ディスカッションでは何が審査されているか?を考える
そもそも「グループ・ディスカッション」って何だろう?と思われる受験生もいらっしゃると思います。一方で「私はコミュ力ある方だから大丈夫!」「模擬コッカーだし、いつも通りやれば何とかなるっしょ」と考えておられる方もいるかもしれません。
ただ何事も油断は禁物!です。
東大法学部のグループディスカッションで「何が審査されているのか?」、そこを意識して取り組むとと、取り組まないのではないのでは結果に大きな差が生まれます。
大前提として最重要なのは東大法学部がどんな人材を求めているかを理解すること
【求める学生像】現代社会,とりわけグローバルな場でリーダーシップを発揮する素質を持つ学生。すなわち,優れた基礎的学力を備えるとともに,現代社会のかかえる諸問題に強い関心を持ち,実社会の様々な事象から解決すべき課題を設定する能力,さらには他者との対話を通じて,その課題の解決に主体的に貢献する能力を有する学生。
この募集要項の「求める学生像」は本当に大事なので、法学部受験生は何度も、何度も、何度ーーーーも熟読しましょう!(大事なので三回言いましたw)そしてこの「求める学生像」からグループディスカッションで何が評価されているのか、理解が深まってきますよね。要素分解をすると下記の通りになると思います。
(1)現代社会、とりわけグローバルな場でリーダーシップを発揮する素質を持っていること
(2)優れた基礎学力を備えていること
(3)現代社会の抱える諸問題に強い関心を持っていること
(4)実社会の様々な事象から解決すべき課題を設定する能力
(5)他者との対話を通じて、その課題の解決に主体的に貢献する能力を有する学生
まさにこの「求める学生像」にあなたが当てはまっているのか?それをグループディスカッションでは審査されていると考えて良いでしょう。当たり前のことではありますが「当たり前のことをバカにしないで、ちゃんと抑える。」それが推薦入試合格においてもとても大事なことなのです。
東大法学部のグループディスカッションで審査されている5つのこと
1、論理的思考力
2、発想力
3、コミュニケーション能力
4、法や政治に対する関心
5、法や政治を学ぶ能力
なぜこのように断言できるかと言えば、これまた募集要項に そのまんま書いてあるからです!
グループ・ディスカッション及び個別面接を行います。グループ・ディスカッションは,その場で与えられたテーマについて,少人数のグループで議論してもらい,論理的思考力,発想力,コミュニケーション能力などを審査します。個別面接では,提出書類・資料に関連する質問などを通して,法や政治に対する関心と,それを学ぶ能力とを確認します。
(東京大学推薦入試募集要項 20pより)
より大切なのは「聞く力」
グループディスカッションでありがちな落とし穴は「自分の発信力」の誇示に終始してしまうことです。
試験本番ではついつい「自分がどれだけ発言できるか」に囚われてしまいがちです。特に自分の一生を左右する試験の場面では、焦りや緊張も加わり、周りが見えなくなってしまうものです。決して「自説を主張する力」「自説を論理的に展開する力」が重要でないというわけではなく、むしろそれも極めて重要です。しかしだからこそ、「聞く力」の重要性を見落としてしまいがちです。
だからこそ、参加メンバー全員の意見を尊重しながら、設定されたアジェンダに対する問題理解・問題解決が深まるディスカッションをあなたがリードできたら、そこは非常にポイントが高いと言えます。今回「聞く力」にクローズアップした理由はまさにここにあります。
【求める学生像(抜粋)】他者との対話を通じて,その課題の解決に主体的に貢献する能力を有する学生。
募集要項の【求める学生像】からも明らかなように、自分の知識だけをひけらかしたり、自分とは異なる意見をねじ伏せるような発言をするのは絶対にNGです。(繰り返しますが、自説を論理的に展開する力そのものは非常に重要です。)
入学後を少しだけ想像して見て欲しいのですが、自分の知識をひけらかすような人が大学の学問を深めていけるでしょうか?法や政治を通じて豊かな人間社会を構築していけるでしょうか?答えは明確にNOだと思います。
多様な意見が存在するのが人間社会です。その中で合意を形成し、秩序ある豊かな社会を生み出そうとする営みの総体が「法や政治」です。だからこそ、他者の意見、特に自分とは異なる人の意見を虚心坦懐に「聞く力」は法学部で学ぶ人にとって不可欠な力なのです。
「聞く力」を発揮するための3つのテクニック
(技術1)笑顔や相槌は相手を発言しやすくする道具。誰もが発言しやすい環境を自ら創りだしてみよう。
(技術2)「自分が自分が」と焦る気持ちは分かるけど、「聞くこと」を忘れないよう常に意識する。制限時間が迫っている状況で焦りがでてしまいそうな時こそそれを意識する!
(技術3)自分とは異なる考えを全否定しない
⇒他者の発言をどのようにして「全体の議論」に活かすかに知恵を絞ることが重要です。参加者全員の意見を活かした、ディスカッションを目指し、あなたがそのイニシアチブを発揮しましょう。
2.主張と根拠はセットを徹底する
主張には必ず根拠・とにかく発言することが大前提
結論を述べた上で、「ナンバリング」(一つ目の理由は~~。二つ目の理由は~~。以上より~。)を意識して、最初の発言から他の受験生に差をつけられるよう意識しましょう。
【例示】私は監視カメラの設置に部分的に賛成します。なぜかと言えば、理由は二つあります。一つ目は、監視カメラを設置することで地域の安全を守ることができると考えるからです。犯罪の抑止力となり、地域住民に貢献できるのであれば、監視カメラの設置には賛成です。二つ目の理由は、行政コストの軽減に寄与できると考えるからです。治安維持を人手だけで対応するのには予算的にも、人員的にも限界があります。特に犯罪が起こりやすい夜間は人員確保は困難です。こうした局面で、監視カメラは有効だと考えております。しかし、プライバシーの侵害や監視社会化にといった大きな課題も残されているとも同時に考えます。こうした論点について、皆さんと議論し、意見を深めていけたらと考えています。今日はどうぞよろしくお願いします!(笑顔で締める。)←これくらい出来るのが最低条件です。
賛成、反対を絶対的なものにしすぎると、後の議論で、他者の意見に柔軟に対応できなくなる可能性もありますので、その点は注意する必要があります。
ただ確固たる意見がある場合はその限りではありません。何事もケースバイケースなので、このアドバイスも「一つの意見」として参考にして、あくまでグループディスカッションに対する「自分なりの考えや解釈」を自らの内に持つことを強く推奨します。
ファーストオピニオンは特に気合いを入れるべし
グループディスカッションの冒頭は特に気合いを入れて臨む必要があります。試験官も人間ですから、ディスカッションの全ての時間に集中力を研ぎ澄まし続けることは困難です。特にディスカッション冒頭の意見は、その人の「第一印象」が決定づけられる重要なポイントになります。もちろん、ディスカッションの中で何度でも挽回する局面は作り出せるのですが、冒頭に気合いを入れておいて絶対に損はありませんし、注力すべき最重要ポイントの一つであることも間違いありません。
3.設問分析を徹底しよう
~問題とは何なのか?についてグループ全体でまず共有していく
何が、誰にとって、どのような問題なのか?
(1)社会状況の変化(グローバル化、規制社会から合意形成社会への転換)
(2)日本社会の特性(共同体的規範、お上による支配、世間の目)
なぜ、この問題は重要なのか?
⇒
(1)自己決定権は「強い個人」と「弱い個人」に分けて考える
(2)本当に問題と言えるのか?代替策はないか?
(3)どういった観点から重要と言えるのか?議論を深める
⇒この観点では「人々の視点」を押さえておくことが最重要!(人々の権利)
なぜ、この問題が起こっているのか?
⇒原因を分析することで、どのように解決すればよいか考える際のヒントになる。
⇒対立軸を押さえた上で、「妥協案」が考えらないか検討してみる。
4.GDにおける役割を整理して本番に臨もう
この役割は、「一つの役割につき誰か一人がそれをやる。」といった類のものではなく、絶えず、自分が下記の役割の何かを担うチャンスを伺うものです。「必要な手札を、必要な時に切り出す」そのようなイメージを持つことが重要です。
①まとめ役、先導役
議論を引っ張るのはまとめ役になります。この役回りは最も難しいけれども、最も目立つ役回りでもあります。この役割に一番大事な事は「聞くこと」にあり、「対立軸を整理する力」も肝要になります。
⇒①「メリット・デメリット整理」「ポジティブな面・ネガティブな面での整理」②「論点を分ける・絞る」③曖昧な言葉、設問を定義する④対立軸を発見する⑤因果関係を確かめる、などのテクニックが非常に重要となってきます。
②議論を主題に立ち返らせる
議論には脱線がつきものです。
常に課題文を念頭に置き、話が逸れていたら、課題文に議論を戻す
※しかし、議論の引き戻し方が強引な場合、グループの雰囲気が急激に悪くなる場合もあるので要注意です!
そもそも何を「脱線」とみなすかは、かなり慎重な判断を要するものでもあります。さらに、「脱線している」と見なされた側は、心情的にも「脱線」とは認めたくはありません。皆さんも逆の立場だったたそう思いますよね。
(典型的なNGパターン)× 議論が脱線しているので、一度話を本題に戻したいと思います!(キリっ)
(理想的な修正パターン)○今の議論はこういう面で、とても大切だと思います。そして、設問とこうした議論がどう本題と関係していくるかを考えていくことでより議論に深みが出ると思うのですがどうでしょうか?また、こういう論点を議論すると、本題の〇〇により迫っていけると考えますが、どうでしょうか?
③情報提供
知識や経験による情報提供を行います。人と違ったアイデンティティーを持っている人は自分でしか語れないこと語ってみるべきです。「海外経験がある人がその国の社会制度を紹介する」などが挙げられます。また、知識の提供は、たとえ相手が中学生だとしてもわかるように分かりやすくを心がけて、丁寧に行えば高評価に繋がります。
④アイデアマン
知識に基づいた新しい提案やデメリットを回避する代替案の提示します。注意点としては、議論が交錯している最中に、思いついた拍子でアイデアを提示してしまうことです。焦る気持ちはわかりますが、議論の流れによく見極め、アイデアを出すタイミングを見極めるのは非常に重要なポイントになります。また、アイデアや提案を出す場合は、最後に「私はこのように考えますが、みなさんいかがでしょうか?」と議論全体を盛り上げていく姿勢を忘れずに示そう!
⑤タイムキーパー
残り時間を考え、まとめを促したりする役割。注意点としては、まとめを促すタイミングを見誤ると終わる時間が早すぎたり、遅すぎたりしてしまうので要注意です。ただ時間のアナウンスをするのではく、同時にまとめ役を行うなど「合わせ技」で攻めてみよう!
5.グループディスカッションは実践を繰り返すのが重要
グループディスカッションはとにかく上記のポイントやコツを頭に入れた上で、実践演習を反復することが極めて重要です。ポイントやコツを頭では理解したとしても、それを実践する難易度はまた違った大きさがあります。実践することで、自分が理想とする行動ができたかをフィードバックしてもらうことも重要です。それを繰り返す中で、自分が自分でも気付けていないような「癖」を指摘してもらい、それを修正していく地道な努力が求められます。「ローマは一日にして成らず。」一般入試も、推薦入試も、地道な努力が求められる点では完全に一致しているのです。
お決まりの我田引水となってしまい恐縮ではありますが、AO義塾では法学部に特化したグループディスカッションの演習を行なっています。その演習はオンラインでも時間を合わせることが受講できます。実際の東大推薦入試法学部の受験者や合格した東大法学部推薦生、そして慶應大学法学部のAO入試でグループディスカッションを経験し合格した現役高校生らと一緒に、試験本番と同様の形式で、無料のディスカッションの演習を行なっています。「法学部のGD演習希望」と明記の上でご連絡いただければ、地方在住の方でもすぐに受講できるよう手配します。下記からお気軽にお問い合わせください。
6.おすすめの自習法ー迷ったらこの三冊ー
自宅で本を買うだけでできる効果的な自習法もご紹介します。特に東大法学部教授である井上達夫先生の『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』は強く推奨します。東大法学部は現代社会の中で「正義」を実現する責務があると私たちを駆り立ててくれます。
法哲学の入門を理解する
『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門』(井上達夫)
時事問題に強くなる。
『2020年入試用重大ニュース 時事問題に強くなる本』(学研プラス)
ディスカッションについてさらに理解を深める
『東大生が書いた 議論する力を鍛えるディスカッションノート: 「2ステージ、6ポジション」でつかむ「話し合い」の新発想! 』(東大ケーススタディ研究会)
皆さんの入試が実りあるものになることを願っています。そして、東京大学への挑戦権は決して誰しもに与えられたものではありません。皆さんが物凄く努力をしている方に違いありません。けれど、努力できる環境すら与えられなかった人たちも沢山います。そんな不公正を正す道具として、法や政治があるはずです。私たちがサポートしたり、関わってきた東大推薦法学部の合格者たちの共通項も、そうした不公正を正そうとする想い想いの「志」でした。
皆さんが東京大学法学部で学ぶ「志」が新たになり、社会貢献の一歩を踏み出すお手伝いとなるような情報提供となったならば幸いです。
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