memo: プライバシーの経済学入門
要旨
本稿では、「プライバシーの経済学」と呼ばれる分野のサーベイを行う。インターネット空間における個人情報の取扱いに対する関心がグローバルに高まるなか、プライバシーの経済学は、近年のプライバシー保護規制当局による規制強化の動きと軌を一にしつつ急速に発展している。プライバシーの経済学が教えるところでは、社会的に望ましいプライバシー保護水準をどう決めるか、個人情報データが有する「負の外部性」に起因するプライバシーの侵害にどう対処するか、といった問題を市場メカニズムによって解決することは難しい。こうした認識は、デジタル決済システムを利用する人々に安心感を与えつつデータの利活用をどう進めていくかを考える際に、重要な示唆を与えうるものである。
Memo
プライバシーの経済学のブームは3度目らしい
Cambridge Analytica によ る個人情報データの不正利用スキャンダル
Cambridge Analytica は、選 挙コンサルティング目的で Facebook ユーザー 5,000 万人分の個人情報データを 不正に入手し、2016 年の米国大統領選挙や英国の EU 離脱国民投票の際に利用 したといわれている
差分プライバシー
プライバシー保護の度合いを表現する「差分プライバシー(differential privacy)」
差分プライバシーをツールとして用いると様々な政策的議論が可能になる。 もっとも、2.3節でみるように、現時点では、差分プライバシーのパラメータを 観察データから明らかにすることは難しい面がある。また、2.4節でみるように、 合理的な差分プライベート・システムを市場メカニズムによって設計すること も困難であると考えられている。
効用関数にプライバシーコストを盛りこむ
サービスを利用して得られる効用とプライバシー侵害コスト×ε
GDPRでオーディエンス行動ログのノイズが減った
同一人物が複数cookieを持つことがなくなった
感想
差分プライバシー自体は実用化されているしGoogleの実装も公開されているのに対して、経済学への応用つまりミクロ経済学的に実際の人の行動に対してのあてはめや説明が可能なレベルにはまだまだ遠いという印象を持った
差分プライバシーのパラメータを使った効用モデルを使うにはパラメータの推定が必要だが、そのパラメータを求めるのが難しいという段階という感触をもった