大学設置基準とオンライン授業の関係
本ページの作成日:2021/3/15
本ページの最終更新日:2021/3/15
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1 大学設置基準における位置づけ
まず、大学設置基準において「授業」とは以下のとおり規定されています。
【大学設置基準 第25条 第1項及び第2項】
第1項:授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
第2項:大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。
第2項の「文部科学大臣が別に定めるところ」とは、以下のとおりです。
【平成13年文部科学省告示第51号(大学設置基準第25条第2項の規定に基づき、大学が履修させることができる授業等について定める件)等の一部改正(平成19年文部科学省告示第114号)】
通信衛星、光ファイバ等を用いることにより、多様なメディアを高度に利用して、文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもので、次に掲げるいずれかの要件を満たし、大学において、大学設置基準第25条第1項に規定する面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。
一 同時かつ双方向に行われるものであって、かつ、授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所(大学設置基準第31条第1項の規定により単位を授与する場合においては、企業の会議室等の職場又は住居に近い場所を含む。以下次号において「教室等以外の場所」という。)において履修させるもの。
二 毎回の授業の実施に当たって、指導補助者が教室等以外の場所において学生等に対面することにより、又は当該授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかにインターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されているもの。
つまり、メディアを利用して行う授業として一、二のいずれかの方法をとることが大学設置基準上で認められている、ということになります。
一は、メディアを利用して、遠隔で映像・音声のやりとりを行うリアルタイムの授業です。
テレビ会議システムやZoom等のICTを用いて、「同時」かつ「双方向」で遠隔授業をおこなうことが該当します。教室は、大学の一教室、大学図書館のラーニング・コモンズ、会議室等、「授業を行う教室等以外の教室、研究室またはこれらに準ずる場所」が利用可能とされています。
二は、メディアを利用して講義内容を配信し、その後、学生の意見・質問・コメントに応対する授業です。
kibacoを利用したり、YouTubeとkibacoやメールなどを組み合わせることが考えられます。
なお、メディアを利用して行う授業でも、以下の考え方は変わりません。
1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容で構成する
講義および演習については、15時間から30時間までの範囲で定める時間の授業をもって1単位とする
【大学設置基準 第21条 第2項】
第2項:前項の単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。
一 講義及び演習については、15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
二 実験、実習及び実技については、30時間から45時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし、芸術等の分野における個人指導による実技の授業については、大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。
三 一の授業科目について、講義、演習、実験、実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については、その組み合わせに応じ、前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
2 「メディアを利用して行う授業」の修得可能単位数の上限
卒業・修了に必要な単位数における、メディアを利用して行う授業の修得可能単位数については、以下のように上限が設定されています。
学部(通学制):卒業に必要な単位数(124単位以上)のうち、60単位まで
学部(通信制):卒業に必要な単位数(124単位以上)すべて
大学院:修了に必要な単位数(30単位)すべて
【大学設置基準 第32条 第1項及び第5項】
第1項:卒業の要件は、大学に4年以上在学し、124単位以上を修得することとする。
第5項:第1項の規定により卒業の要件として修得すべき124単位のうち、第25条第2項の授業の方法により修得する単位数は60単位を超えないものとする。
3 特例的な措置として認められる遠隔授業等について
文部科学省から発出された、令和2年7月27日付通知の主な内容は以下のとおりです。
今回の特例的な措置として、面接授業に相当する教育効果を有すると大学等が認めるものについては、面接授業に限らず、自宅における遠隔授業や、授業中に課すものに相当する課題研究等を行うなど、弾力的な運用を行うことも認められる。
遠隔授業の実施にあたっては、指導計画(シラバス)に基づく実施、オンラインでの出席管理や課題の提出等による状況把握、各学生への伝達手段や相談体制の確保、入学等による授業実施状況の把握に留意する。
特例的な措置として認められる遠隔授業等は、大学設置基準第32条第5項の規程は適用されず、同規定の60単位の上限に算入する必要はない。
履修学生に対する試験方法は、一斉に実施する定期試験等に限らず、不正防止策を講じたうえで、レポートの活用による学習評価など、到達目標に応じた適切な成績評価手法を選択できる。
【本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法に係る留意点について】(抄)
(令和2年7月27日付 文部科学省高等教育局大学振興課 通知)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,「1.本年度後期や次年度における教育課程の編成に当たっての基本的な考え方について」においてお示ししている面接授業の実施や,臨時休業が長期化するなど,本来授業計画において面接授業の実施を予定していた授業科目に係る授業の全部又は一部を面接授業により予定通り実施することが困難な場合において,遠隔授業等を実施する場合には,次に掲げる事項に留意する必要があること。
① 大学設置基準第 25 条第1項は,主に教室等において対面で授業を行うことを想定しているが,今回の特例的な措置として,面接授業に相当する教育効果を有すると大学等が認めるものについては,面接授業に限らず,自宅における遠隔授業や,授業中に課すものに相当する課題研究等(以下「遠隔授業等」という。)を行うなど,弾力的な運用を行うことも認められること。この際,以下の事項に留意すること。
・授業担当教員の各授業ごとの指導計画(シラバス等)の下に実施されていること
・授業担当教員が,オンライン上での出席管理や確認的な課題の提出などにより,当該授業の実施状況を十分把握していること
・学生一人一人へ確実に情報を伝達する手段や,学生からの相談に速やかに応じる体制が確保されていること
・大学等として,どの授業科目が遠隔授業等で実施されているかなど,個々の授業の実施状況について把握していること
② 上記特例的な措置として認められる遠隔授業等は,同条第2項の規定による遠隔授業ではなく,同令第 32 条第5項の規定は適用されないことから,同規定の 60単位の上限に算入する必要はないこと。
③ 上記特例的な措置として認められる遠隔授業等を行う場合にも,大学は当該授業科目を履修した学生に対しては試験の上単位を与えることになるが,その方法は,一斉に実施する定期試験等に限られるものではなく,レポートの活用による学習評価等,到達目標に応じた適切な成績評価手法を選択することができること。その際,課題の提出や定期試験等の代替として行われるレポートの活用による学習評価等の際の不正防止対応方策を講じていること。
出典:京都大学高等教育研究開発推進センターのウェブサイト(2021.2.10)