ポートフォリオを用いた学習課題の自己設定〜ルーブリック評価をポートフォリオ化し、学生が自らの学習の問題点を抽出できるように支援する
本ページの作成日:2022/3/14
本ページの最終更新日:2022/3/14
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取組実施代表者名:鈴木準一郎 教授(理学研究科生命科学専攻)
取組年度期間:2019~2020年度(2年間)
【取組みの背景】
生命科学科の学生の大半は、レポートには積極的に取り組み、表層的な学習上の課題解決には高い能力を示した。
その一方で、一定の割合の学生には、複数のレポートの評価や添削結果から、共通して存在する根本的な弱点を抽出できない傾向が認められた。
その原因として、教員と自己の評価を統合した学習結果を俯瞰的に学生が把握できないためだと考えられた。
⇒自分には、何が「でき」て、何が「できない」か、を学生は充分に理解していないことが想定された。
【実施内容】
・ルーブリックの組織的導入を進め、レポートと評価のルーブリックをポートフォリオとして集積する重要性を明示的に指導
・学習上の課題を学生が抽出する課題設定シートの雛形を提供し、返却されたレポートとルーブリックの復習から、このシートを学生に作成させた。
・課題設定シートもポートフォリオの一部とすることで、課題の把握とその解決を促せた。
・スマホ等で利用可能なアプリを作成・利用しeポートフォリオ化も目指した。
【結果】
・ルーブリックの導入により、従来の添削では、しばしばコメント・評価の対象とされない「できていたこと」が「正しい」と評価されるようになった。その結果、学習の「成果」を学生が自覚できた。たとえば、正しい書式でグラフを作図できる学生の割合が高くなった。これは、添削とルーブリックにより、何が「正しい」か、を学生が具体的に理解したためと思われる。
・ポートフォリオにより学習成果を蓄積する方法を学生は学んだ。その結果、大学入学時からの成長を俯瞰でき、学習の成果を実感できる学生が増えた。たとえば、グラフの書式の評価項目を、異なる実験間で比較することで、能力や技術の向上を自ら確認できたのだ。
・一方で、作成したポートフォリオを用いても、自らの弱点を抽出できない学生も見られた。実験の題目によってルーブリックが異なるので、教員の指摘を深掘りし、皮相の異なる指摘を抽象化して共通の問題点を抽出できないためだと思われた。
【今後の展開】
eポートフォリオ化については、当初利用予定だったプラットフォームの機能改変等により本取組内での実施は困難となった。別のサービスの利用などeポートフォリオの利用支援を模索したい。
本取組を通じて、ルーブリック、ポートフォリオの有効性は確認された。その一方で、添削や評価に通底する問題を抽象化し抽出できない学生の能力向上にはより根源的なアプローチが必要だと考えられた。今後、ルーブリックやポートフォリオを利用しつつ、新たなアプローチの模索を続けていく。
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