データサイエンスと「問い」
分析手法よりも「問い」が重要
適切な問題設定がなければ、いかに「すごい分析テクニック」があろうとも意味をなさない
結局、やりたいこと/知りたいことは何なのか? という「問い」を明確にする必要がある 研究でも実務でも同じ
ドメイン知識(領域知識)や実践知、現場とのコミュニケーションが必要 問いにはいくつかの種類がある。また、分類法にもいろんなものがある
「問い」の種類の分類 その1
「問い」の種類(大谷 2019より)
「記述的問い(descriptive question)」
「どうなっているか?」を問うもの
e.g. オンライン授業で学生の理解度はどう変化したか?
「処方的問い(prescriptive question)」
「どうすればよいか?」を問うもの
e.g. オンライン授業で学生の理解度を高めるにはどのような施策が有効か?
「予測的問い(predictive question)」
「どうなりそうか?」を問うもの
e.g. オンライン授業を推進した場合、入学者数はどのように変化するだろうか?
記述的問いと処方的問いの中間的な問い
(参考)大谷尚:“質的研究の考え方 研究方法論からSCATによる分析まで”, 2019.
「問い」の種類の分類 その2
社会調査におけるリサーチ・クエスチョンを考える際の補助線
「WHATの問い」
記述の問い(どうなっているのか)
事実関係に関わる「問い」,物事についての記述に関わる「問い」
「WHYの問い」
説明の問い(なぜそうなっているのか)
因果関係に関わる「問い」,物事についての説明に関わる「問い」
実践的インプリケーションを問う問いは,WHATおよびWHYの問いに対する答えを踏まえた上での「How toの問い」としての性格を持っている(※「処方的問い」にあたるもの)
(参考)佐藤郁哉:“社会調査の考え方 上”,東京大学出版会 (2015)
「問い」の種類の分類 その3
ビッグデータ時代のデータ活用の深化に関する議論を整理したもの
https://gyazo.com/140fb87c4db529bdc59f6beb44e7cf38
「問い」の整理としても援用できる
(参考・引用)鈴木良介,“ビッグデータビジネスの時代”,翔泳社 (2011)
「問い」の種類(まとめ)
https://gyazo.com/4775bd4d7c29cc8ff2185eef2adfa25a
「問い」の内容による分類
記述統計やビジュアライゼーションはまずⅠの問いに対応する
ⅡはⅠの結果を用いつつ、場合によっては推測統計なども用いる
Ⅲは機械学習などが用いられ得る
Ⅳはこれらを踏まえた「意思決定」にかかわるもの
(参考)近藤伸彦,“「問い」でつながる教育システム情報学研究”,教育システム情報学会誌, Vol. 39, No. 2, pp. 150-157 (2022)
「問い」についてさらに興味ある人は
以下の4編は、リサーチクエスチョンと仮説に関するとても興味深い論考です。
佐藤郁哉, 問いのかたちと答えのかたち(1):疑問詞の組み合わせからリサーチ・クエスチョンの分類法を模索する, 同志社商学, 72(5), pp. 857-874, 2021.
佐藤郁哉, 問いのかたちと答えのかたち(2):リサーチ・クエスチョンの類型化と問いのレベル, 同志社商学, 73(1), pp. 1-28, 2021.
佐藤郁哉, 問いのかたちと答えのかたち(3):「仮の答え」の類型化を目指して, 同志社商学, 73(3), pp. 893-919, 2021.
佐藤郁哉, 実践型仮説による命懸けの跳躍 : 問いのかたちと答えのかたち・第4部, 同志社商学, 73(4), pp. 1067-1090, 2022.