行動経済学のジャーナルについて
行動経済学のジャーナルの選び方(読むとき・投稿するとき)の参考になるよう、情報をまとめました。ただし、「行動経済学」についてはそもそも「行動経済学とはどのような分野なのか」という話をしなければならないので、やや込み入った話になっています。
注意事項
本文は森の主観が多分に入っているのでご理解ください。
そもそも経済学の分野(フィールド)とは?
経済学の中にはいくつかの分野(フィールド)がある(例.ミクロ経済学、国際経済学、産業組織論)
論文執筆の際、どの分類にあてはまるか、コードを記載する必要がある
コードは複数記載し、分野をまたがる場合もある
コードは「A11」のように、アルファベット1つ+数字2桁でなっている
ここでは、アルファベットを「大分類」、数字1桁目までを「中分類」、数字2桁目までを「小分類」と呼ぶことにする
「行動経済学」はどこにあてはまるのか?
大分類に「行動経済学」はない
中分類に「行動経済学」が含まれるものがある
D9: Micro-Based Behavioral Economics
小分類はD90: GeneralとD91: Role and Effects of Psychological, Emotional, Social, and Cognitive Factors on Decision Making
E7: Macro-Based Behavioral Economics
G4: Behavioral Finance
行動経済学に関するもので、マクロ・ファイナンスでなければD9になることが多い
D8: Information, Knowledge, and Uncertaintyも行動経済学に強く関連している
リスクと不確実性、情報・信念・期待、神経経済学はここに入っている
行動経済学のジャーナル
行動経済学のみを専門とした(JPubE, JLaborEのような)フィールドトップジャーナルはない
Aim & Scopeには"Research with these purposes that explore the interrelations of economics with other disciplines such as biology, psychology, law, anthropology, sociology, finance, marketing, political science, and mathematics is particularly welcome."と書かれていることから、行動経済学の論文を投稿しやすい側面がある
関連分野にはフィールドトップがある
隣接分野としてマーケティング・経営・消費者行動があり、そちらが該当する可能性もある
Marketing Science, Management Science, Journal of Consumer Resarchなど。森は詳しくないのですがもう少し知っておきたいところ
行動経済学のジャーナルの選び方
まず、そもそも自分が探している研究/実施した研究が行動経済学以外のどの分野にあてはまるかを考えておく必要がある
一般的な意思決定を扱っているのであれば、ミクロ経済学(D)にあてはまることが多い
応用分野があれば、それぞれの分野
公共経済学(H)、健康経済学・教育経済学(I)、労働経済学(J)などさまざまな分野がありえる
行動経済学的なアプローチが受け入れやすいかどうか/よく掲載されているかは分野にかなりよりけりなので注意が必要
例えば、Journal of Public Economicsはかなり掲載されている印象
ジャーナルのランク付けとしては、行動経済学専門の雑誌より、一般誌のトップやそれぞれの分野のフィールドトップが上にくる
ジャーナルTier
1. Top 5 (AER, Econometrica, JPE, REStud, QJE)
2. 上記以外のトップ一般誌(AEJシリーズ, REStat, JEEAなど)
3. 該当分野のフィールドトップ(JPubE, JLaborE, ExpEなど)
4. 以降はかなり状況によりけり
一般誌2番手以降(JEBOもここに含まれる)
フィールド2番手以降
行動経済学専門誌
とりあえず行動経済学の論文を読んでみたい(分野が定まっていない)方向け
AEAの雑誌(AER, AEJシリーズ)はJEL Codeで検索できるので、D9を指定するとどんな論文があるか眺めることができる
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