不確実性に対するリスクヘッジとしての「無料」
public.icon
クリス・ アンダーソン. フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略 (p. 87). 日本放送出版協会. Kindle Edition.
人間が失うことを本質的に恐れるからではないかと思う。無料!のほんとうの魅力は、恐れと結びついている。無料!のものを選べば、目に見えて何かを失うという心配はない(なにしろ無料なのだ)。
アメリカでオンラインによる靴販売をおこなうザッポス[Zappos]は、さらに先を行っている。顧客への送料が無料なだけでなく、顧客から返品するときも無料としたのだ。オンラインで靴を買うのは、その靴が自分に合うかどうかわからないという心理的障壁があるが、ザッポスはそのサービスによって障壁をとり除こうとした。驚くことにザッポスが顧客に望むのは、自宅で試すために大量の靴をとり寄せることだ。 心理学的観点からザッポスのケースを見れば、フリーは単純にリスクを減らす働きをしている。私たちが靴屋に行くのは、その靴が自分の足に合い、見た目も気に入るかどうかを確かめるためだ。追加費用なしで消費者に靴を届けることで、ザッポスは小売り店舗とリスクを同じにし、便利さという優位を得た。CEOのトニー・シェイは言う。「唯一の問題は、たくさんの靴を注文して返品することに、いまだに多くの人が罪悪感を覚えていることです。返品してこないのは問題ではありませんが(売れたということですから)、返品をもうしわけないと思うがゆえに、はじめから注文しないことが問題なのです」