任せるリーダーが実践している 1on1の技術
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概要
内容
「1on1」とは、「上司と部下の間で、週1回~月1回、30分~1時間程度、用事がなくても定期的に行う1対1の対話」のこと。インテル、マイクロソフト、グーグル、ヤフーなどの外資系IT企業を筆頭に、日本企業にも導入が相次いでいます。
働き方が多様化し、かつ、働く人の価値観が多様化している昨今、従来よりもより深いコミュニケーションが求められるはずなのに、逆にコミュニケーションの機会がグッと減ってきています。そんな企業の悩みに対して、1on1が解決策の一つとして注目を集めています。
一方で、このために定期的に時間を割くのは難しく、ルーティン化してやめてしまうパターン、話すことがなくなってしまうパターン、成果が見えずやめてしまうパターンなど、多くの失敗例があります。本書は、実施方法だけでなく、失敗例や心理的に気をつけることなど(アドラー心理学の要素も随所に投入)、細かいところまで注意が行き届いており、日本で数少ない「1on1」の本の決定版といえるものです。
著者は、「1on1」をテーマに大企業などで数多く、そして一社でも数回にわたり講師を務めています。その中で出てきた質問など、経験も踏まえて記述しています。
著者
小倉 広
小倉広事務所 代表取締役
大学卒業後、株式会社リクルート入社。組織人事コンサルティング室課長など企画畑を中心に11年半勤務。ソースネクスト(現東証一部上場)常務取締役、コンサルティング会社代表などを経て現職。著書に21万部のベストセラー『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)のほか、『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』(日経BP社)、『もしアドラーが上司だったら』(プレジデント社)、『任せる技術』(日本経済新聞出版社)などがあり、計43冊。著作販売累計100万部超。現在は、アドラー心理学と企業経営を熟知した数少ない専門家として大手上場企業を中心に数多くの企業にて講演、研修を行っている。
第1章 1on1って何だろう?
1.1.シリコンバレーでは常識?上司と部下の1on1
1on1ミーティングとは
上司と部下の間で週1 ~ 月1回、30分~1時間程度、用事がなくても定期的に行う1対1の対話のこと
最初に1on1を経営の重要事項として位置づけたのは、アンドリュース・グローブだと言われている
1.2.期待される効果
Googleのプロジェクト・アリストテレスで明らかになったこと
高業績に最も大きく影響を与える因子が「心理的安全性」であった
誰もが均等に話す機会があること
自由に意見が言えること
否定されない
上記の条件があることで初めてチームの業績が高まる
エンゲージメントにより様々な効果が期待できる
1. 組織のアジリティ(俊敏さ)とスピードの向上
2. 意欲向上
内発的動機づけを支援することができる
3. スキルアップ
内省から学びを概念化し、それを新たな経験に反映させる「経験学習サイクル」を回すことができる
4. 理念・戦略へのアラインメント(方向の調整)
抽象度の高い理念や戦略などの理解のズレを無くし、日々の業務や行動とすり合わせる
5. 問題の早期発見、対処
定期的に対話が行われれば、自ずと問題の早期発見が可能となる
6. リテンション(人材の維持・離職防止)
1on1導入により離職者をひとりでも減らせたら、その効果は数百万円〜一千万円にも昇る
よくある失敗パターンと対処法
リクルートでは、お客さんのアポと1on1がカブったら、客先のアポを変更するようにしていた
徹底して採用や人事を優先していた証teru.icon
1on1の目的
上司がすべきことは、部下の言葉にならない思いを察して「要約」や「言い換える」ことによる概念化の支援
自分でも気づいていなかった新たな意味解釈やポイントに気づき成長することができる
第2章 1on1導入の4つのステップ
2.2.フィジビリティスタディの流れ
実施を前提とした試験導入
1on1を公式制度として導入する場合、フィジビリティスタディ(試験導入)がおすすめ
特定の部門や部署を選び、そこだけで3ヶ月程度試験的に1on1を行う
2.1.フィジビリティの準備
フェーズ0で意識すること
フィジビリティ未実施の段階において、各プロセスを完全に決めるのはおすすめできない
実体験のないままルールを決めても机上の空論でしかなく、議論のムダになるため
暫定的な仮ルールを導入し、それにそってフィジビリティを行ってみるのが良い
仮ルールがフィットしない部分は、適宜変えればいい
2.5.ライン部門でのフィジビリティ
成果が目に見えない
実際に寄せられた声のひとつに「成果が目に見えない」というものがある
成果が実感されないと、人は継続が困難になる
話し合うべきことは「成果の定義」である
2.6.全社導入と運用体制の確立
1on1継続の後押し
社内広報をうまく活用することで、継続をサポートする
社内報やオウンドメディアで「私の1on1」などの企画を連載する
ベスト1on1賞などを選出し表彰する
他にも「フォローアップMTG」や「キックオフMTG」を実施するとよい
第3章 導入に際してよく寄せられる質問
3.1.経営者からよく寄せられる疑問
頻度や時間の加減はしても良いか
適度な範囲であれば、時間の下限は問題ない
1on1の頻度は、組織や部下の成熟度に応じて変更してもいい
変化のスピードが遅い研究開発部門では月1程度でよく、変化の速いマーケティング部門では頻繁に実施する
実施時間が短すぎると、部下はやっかいな問題を持ち出さずに簡単な問題しか持ち出さなくなってしまう
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3.2.人事部門からよく寄せられる質問
食事や飲みながらの1on1は問題ないか
原則はNGで、なぜかというと「ながら」でできる話はおのずと軽い話になりがちだから
守秘義務の徹底はどうすればよいか?
守秘義務を上司が追うことを部下と上司に説明しなければならない
その上で、上長や人事部門に相談しなければならないことがあれば、本人の許可をとって報告する
評価に反映されるのではないかと怖がられてしまう
事前に上司と部下に「評価の場ではない」ということを徹底して周知する
評価制度があれば、守秘義務と合わせて人事考課と切り離されていることを表明する
3.3.管理職からよく寄せられる質問
部下の数人とはすでに仲がよく、1on1は必要ない
1on1はおしゃべりの場ではないため、中長期的な深い話をするためにも1on1は必要
第4章 必要な5つのスキル
2.1.1on1導入に必要不可欠な管理職の5つのスキル
1. 傾聴
相手の話を注意深く共感して丁寧に聞くこと
傾聴の代表的スキル
相づち/オウム返し/述語的会話(「それで?」や「それから?」を使い会話を促進)/沈黙/非言語/ペーシング
カール・ロジャースの傾聴の3条件
無条件の肯定的配慮:相手の話をジャッジせず、無条件に肯定的に聞くこと
共感的理解:「あなたはそう考えているのですね」と相手の立場を共感的に理解すること
自己一致:あるべき自分と現実の自分が乖離せず自然体で一致していること
2. 勇気づけ
自分には能力があり、周囲の人は仲間であるという感覚を与えること
「正の注目」により、相手の良い点を出して(プロセスも含め)褒めてあげる
相手が自ら取り組むべき困難から逃げずに、立ち向かう活力を引き出す
3. 質問
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効果的な質問を投げかけ、部下の頭の中に空白をうみ、経験学習サイクルを推進すること
参加型マネジメント:内発的動機づけを生み出す3つの要素
有能性 / 対人関係性 / 自己決定性
このうち、自己決定性を作り出すのに必要なのが「質問」
フィードフォワード:未来に起こりうる可能性を予見伝達すること
4. フィードバック
目標と部下の行動とのギャップを部下に伝えること
使い方を一歩間違えると、信頼関係を壊す「勇気くじき」になることもあるので注意
客観的な「事実」をもとに行うべきで、事実ではない「推測」や「意見」でフィードバックしないこと
5. 結末を体験させる
相手に答えを教えるのではなく「失敗も含めた経験」をしてもらい、そこから学んでもらう
アドラー心理学における独特の教育技法
部下の体験を先取りせずあえて放置し、後から「何を学びましたか?」と内省を促す
上司と部下の信頼関係が前提となる
第5章 あると便利な5つのメソッド
5.6.協力と目標の一致
部下を適切にサポートする
部下の成長を「信じて待つ」のと「課題解決を前にすすめる」ことの矛盾を解消しなければならない
部下と適切な距離感を維持し、まずはひたすらに相手のことを理解する
その上で「なにか手伝えることはありますか?」と相手のドアをノックする
相手を尊重するとともに、主体性を大切にしていることの表れ
第6章 欠かせない5つのマインド
6.2.マインド2 尊敬
行為と人格を分離する
気をつけなければならないのは、行為と人格を分離すること
つまり、不適切な行為≒不適切な人格、と分けて見ること
不適切な行為を行う人の目的は共同体に所属するためであり、善である
6.3.マインド3 信頼
根拠なしに白紙委任状を出す
信用と信頼の違い
信用は、過去の実績や担保などの裏付け(≒条件付き)があって相手を信じること
信頼は、無条件で相手を信じること
会社対会社の契約は信用ベースで動いている、その中で動く人間も信頼関係で動くわけにはいかない
日常業務は信用で運営し、1on1は信頼で運営するという使い分けが重要
人に優しく=信頼、仕事に厳しく=信用