状況に置かれた知
「状況化された知識: フェミニズムにおける科学の問題と部分的観点の特権(Situated Knowledges: The Science Question in Feminism and the Privilege of Partial Perspective)」は、ハラウェイのフェミニズム科学についてのビジョンに光を当てる論文である。 この論文は、サンドラ・ハーディング の「フェミニズムにおける科学の問題(The Science Question in Feminism)」(1986)についての論評が元になっており、Hardingの「科学の後継者(successor science)」に対する回答となっている。 ハラウェイは、科学的なレトリックや科学的客観性(英語版)といった、男性化された慣習へのフェミニストの介入について批評を行っている。 この論文は、伝統的なフェミニスト批評を分析するために分極化というメタファーを使っている。 一方は、科学は修辞的な実践であり、すべての「科学は競争の力場」だと主張する立場である。 またもう一方は、ハラウェイが「フェミニスト経験主義」と呼ぶ、フェミニストが考える客観性に関心を持つ立場である。 ハラウェイはこれら二つの立場を総合する、「状況化された知識」に基づく認識論を主張している。 ハラウェイは、世界における自身の立場の不確実性、そして知識追求の競争的本質を認めて理解することで、主体は自身が中立な観察者であるときよりも、より客観性を持った知識を生み出せるだろうとしている。
『科学と社会的不平等』(サンドラ・ハーディング)
スタンドポイント・アプローチでは、すべの知識が「状況に埋め込まれた知識(situated knowledge)」と考えられている。つまり、歴史的に固有な形で––例えば、男性中心主義的、ヨーロッパ中心主義的なな文化プロジェクトの一部として、あるいは、フェミニストや反人種差別主義的なプロジェクトの一部として––構成されているとみなされる。こうしたアプローチは、特定の社会的あるいは歴史的な位置をまったくもたないという立場––それは、ダナ・ハラウェイが近代科学哲学の「神のトリック」として特徴づけたものである––から発言できるという可能性を否定するものである。