自由落下を信じよう(自由落下試験の正確性についての議論)
前書き
ABSの空力中心は、ブロックの角度を参照していないため厳密なものではない。そのため、高高度からの自由落下によって重心と空力中心を確認する方法が取られることが多いが、果たしてこの方法は本当に正しいものなのだろうか?航空力学を履修すれば自明な事柄なのだろうが、今一度確認しようと思う。
やり方の確認
https://scrapbox.io/files/6370f1a98f1818001d16a4be.mp4
推力0の状態で高高度から落下させる
前傾するか後傾するかで空力中心(≒空気抵抗の中心)が重心より前にあるか後ろにあるかが分かる
また、傾く速さによって重心と空力中心がどれだけ離れているかが分かる
https://scrapbox.io/files/6370f2d3bdcc84001dec4a5e.mp4
応用として、動翼を動かした状態で落下させることで、動翼の操作による空力中心の変化を知れる。これによると、カナードは操作すると安定寄り(翼全体による旋回性能が落ちる)に、尾翼は操作すると不安定寄り(翼全体による旋回性能が上がる)になるようだ。
動翼操作と落下に対する空気抵抗の変化について
https://scrapbox.io/files/6370f5baf823bd001d2e4d2f.mp4
上のように、翼を動かすと、正の迎え角であれ負の迎え角であれ、空気抵抗は減少する。従って、カナードつまり重心より前方の動翼を操作すれば空力中心は後ろに寄り、尾翼つまり重心より後方の動翼を操作すれば空力中心は前に寄る。1個前の動画の変化はこれによって説明できる。
しかし、水平飛行中にカナードを操作すると重心より前方の揚力は上がるはずである。空力中心が揚力中心と一致するのであれば、この結果はいささか不自然ではないか? この疑問には数百時間の頃からずっと悩んできた。
自由落下と飛行の関係(本題)
この疑問に答えるには、まずこの試験が何を調べているのかについてを明かさなければならず、またもっと前に用語についても一つずつ確認していく必要がある。空力中心とは?そもそも空力とは?一から、と言いつつ都合のいい程度に確認していこう。
空力効果、空力中心とは
空力効果とは、進行方向と翼の向きとのズレに起因する、揚力によるモーメントである。航空力学用語としての意味とは異なるかもしれないが、少なくともBesiege空力学ではその認識が正しい。そして、そのモーメント(ベクトル)の始点を空力中心と呼ぶ。従って、空力中心はその瞬間の揚力中心と一致する。ここまでは諸兄(少なくとも当時の私)の認識と相違ないと思う。
自由落下試験が調べるもの
この自由落下試験によってわかるのは、空力中心と重心の位置関係、つまり機体全体の空力効果の方向性とその大きさである。
迎え角と揚力の関係
現実は別として、Besiegeにおける迎え角と揚力の関係は、多分sin2θがかけられている。つまり揚力は0°から45°にかけて増大し、45°から90°にかけて減少する。ちなみに、ここで言う迎え角とは、進行方向と機体(翼)のズレである。
なぜカナードを動かすと安定寄りになるのか(本題の本題)
ようやく本題の本題である。この問題は、進行方向と機体の向きとがずっと平行であるという誤解に起因するものである。つまり、動翼を動かした直後のコンマ数秒は確かに空力中心は前側に寄るかもしれないが、機体の進行方向がズレた途端に、空力中心は後ろ側に寄るのである。スクショで具体的に見ていこう。
https://scrapbox.io/files/63711eb9faa13a001d6c8177.pnghttps://scrapbox.io/files/63711ed1ed42b3001d37fc2c.png
左から、
動翼を動かし始めた直後、まだ揚力変化の影響が出てない状態
そこからds秒後、機体が微小だけ傾いた状態
である。
左の状態から右の状態に移ったときの動翼、固定翼の揚力変化に注目してほしい。sin2θのグラフの傾きは0°で最大であり、ずっと単調減少するため、左から右に移る過程での揚力変化は、仮に動翼と固定翼の大きさが同じだとしても固定翼の方が大きい。当然、実際には固定翼の方がはるかに大きいので、この差はもっと大きくなることを考えれば、機体全体の空力中心は迎え角45°よりもかなり早い段階で不安定寄りから安定寄りに移ると考えられる。
これがカナードを動かすと安定寄りになるについての考察である。
カナードの利点
本題はこれで終わりだが、最後にカナードの利点についての考察を載せる。細かい考察や検証はしていないので上の話程の正確性は期待しないでほしい。
(機体によっては)動翼を離れた位置における ジェット機なんかがそう。
動翼を増やすことができる そらそうだ。特に、下の話を考えれば不安定にも限度はあり、そこまで来たら動翼モーメントを増やすことを健闘した方が良さそうである。
操舵の応答性が速い 動き始めは同じかもしれないが、終わりの方は多分速い。少なくとも尾翼操作で不安定になる機体よりは速いんじゃないか?
以下自分用コメント欄
自分用だからだいぶ端折ってる、というか簡単な話を小難しく書くっていう一番嫌いなパターンになってるの良くないな…手羽先.icon