基礎空力学(理論編)
※動画できたので更新はあまりしない
文字起こし兼動画化の際のメモ。自分みたいにちゃんと理屈も教えてくれないと困る人用だけど微積がギリ出てこない位にする(まあ確証の取れる範囲の説明ってこと)。また、ABS, ColliderScopeの見方を知っていることを前提とする。
動画URL
例によってニコ動の方を優先して見てほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=kfzAvL-TDQA&t=254s
目次と要約
迎え角と揚力の関係 翼は角度を与えないと揚力を生まない。
Besiegeにおける飛行機が飛ぶ理由 迎え角の偉大さ…なのかなぁ。正直微妙なお話…
ペラについて 空力のベクトルはテクスチャで測るけど、実際の方向はコライダーに合わせるためにズレるって話。
重心と空力中心 重心の前後で翼の挙動が変わるお話。モーメント(てこの原理)大事。
真っすぐ飛ばすには 自由落下と推力中心を揃えるお話。あとそれでもダメな時は大概歪みのせいにしておこう。
動翼の作用について カナードと尾翼の作用のお話。
旋回性能の決定条件 モーメントを増やすには数を増やすかうでを伸ばすか、後は反対側のモーメントを少なくするとか。
迎え角と揚力の関係
空気中を一定速度で水平に飛行する飛行機について考える。この飛行機は、飛行中に無数の空気の粒子がぶつかる事になるが、この状況は空気中で静止する飛行機に無数の空気の粒子が水平にぶつかってくる状況と等価である。
ということで、空気の粒子の代わりに大砲の弾を用いてその状況を作り出してみた。左側の大砲群からは一定時間毎に弾が発射され、翼に見立てた薄長コアブロックにぶつかるか、後ろに流れていく。
まずは水平の場合である。ちょっと音量注意かも。
https://scrapbox.io/files/6386fda688fabe001f727093.mp4
このように、水平の状態では揚力は発生しない。では、進行方向(左方向)に対して先端を持ち上げる方向に翼を回転させたらどうなるか。ちなみにこの回転は正の迎え角を取るともいう。
https://scrapbox.io/files/6386ff0e1c16690022d5659f.mp4
このように、正の迎え角を取ると正の揚力が生まれる。これは、飛行機を完全に停止させると分かりやすい。
https://scrapbox.io/files/6386ffa7d66163001d6c295b.mp4
水平に飛んできた弾は、翼にぶつかって斜め下に方向を変えている。その反作用として、翼には上向きの反作用がかかるので、これが揚力となって機体を持ち上げた訳だ。
では、逆方向、つまり負の迎え角を取るように翼を回転させるとどうなるか。
https://scrapbox.io/files/63870072446d0d001dbf6e9f.mp4
当然、結果は対称的となり、下向き、つまり負の揚力を受ける。これはこんな感じで装置全体を90°横倒しにすると分かりやすいだろう。翼を左に傾けるか右に傾けるかしてるだけなので、結果も線対称になるはずである。
https://scrapbox.io/files/6387011084f6d6001d4b5574.png
このように、正の迎え角を取ると正の揚力が、負の迎え角を取ると負の揚力が生まれる事が分かる。これは、べしえげ上でも同様である。
https://scrapbox.io/files/6387035f12df18001db6ce96.mp4
ちなみに、この結果は上下対称にペラを置いた場合でも同様となる。
Besiegeにおける飛行機が飛ぶ理由
空力ブロックを自由落下させると上向きの空気抵抗を受けるから落下が遅くなる。その間に大きな推進力で前に進めば傍目には水平に飛んでるように見える。
って話にしたかったけど現実はどうやらそうじゃないらしい。下の動画を見てほしい。これは、全く同じ2つの模型のうち、片方はキノコを動かし、もう片方は止めた際にどう落ちるかを測る実験である。また、この実験では、スタビmodを使用することで、迎え角は0°になるようにしている。
https://scrapbox.io/files/63871341995115001df82b91.mp4
そう、やけに滞空時間が長いのだ。
推進している方も自由落下してる方も迎え角は0°なのに、なぜキノコを動かしている方には大きな揚力が働くのか。それは、迎え角の基準は進行方向だからだ。
完全に水平な角度を保って飛行するこの模型は、重力による落下とキノコによる推進によって、水平よりちょっと斜め下の方向に移動している。そのため、下の図のように迎え角の基準となる進行方向も斜め下となり、そこから見ると、翼は正の迎え角を取っている。
https://scrapbox.io/files/638720c35a7675001efb3eea.jpg
進行方向の速度は自由落下の速度よりも格段に大きく、また疑似揚力の源でもある空気抵抗は速度に比例するため、非常に小さな迎え角でも自由落下の場合の空気抵抗よりも大きな力が生まれ、結果滞空時間が伸びていると考えられる。
ペラについて
ウイングパネル、ウイングは見た目通りの空気抵抗の働き方をするが、プロペラの空気抵抗は少し違った働き方をする。
まず、このブロックのコライダーとテクスチャを見てみよう。
https://scrapbox.io/files/63c18b59d0df76001e988371.png
ペラを適当なブロックに設置した際、コライダーは水平、テクスチャはそこから約22°傾いた角度となる。
ABSでペラの空力ベクトルを表示させれば分かるが、空力方向はコライダーと垂直である。つまり、この状態のペラを自由落下させた場合は真っ直ぐ落ちていく。
しかし、空力の大きさ、向きを決めるのはこのコライダー方向ではなく、テクスチャ方向である。
下の装置を見て欲しい。片方はデフォルト角のペラ、もう片方は(テクスチャ)水平ペラ(ABSショートカットキー:G)で作った模型だ。
https://scrapbox.io/files/63c198ed251b13001e69289c.mp4
この通り、水平ペラの方は空力を一切発生させない、つまり水平状態のウイングパネルとほぼ同質な状態となる。ただし完全に同質ではないが、その話は応用空力学にて行う。
この空力決定面(テクスチャ面)と空力方向(コライダーと垂直)のズレこそが謎加速の原因であり、ペラをペラとする最も重要な特徴である。
そんなペラの扱いだが、普通に上下対称に配置すればよく、造形等の制約でそれが叶わない場合は水平ペラを使えば良い。
結局空力をどの方向に作用させるかを決めるのはテクスチャ面だから。
重心と空力中心
マトモに飛べる飛行機を作るうえで最も重要なお話がこの話題だ。これさえ分かっていれば飛行機を作れるし、これで解決できない場合の大半は歪みで片付く。
さて、実は空力中心と言う用語、一般的な意味は普段使っているものと少々違う用なので、ここでの定義を示しておく。
ここで言う空力中心は、
まず、迎え角と揚力、Besiegeにおける飛行機が飛ぶ理由の項の話を思い出して欲しい。水平、つまり迎え角0°では揚力は発生せず、迎え角が+の時に+、ーの時ーの揚力が発生すると説明した。