人間性心理学
人間性心理学とコーチング
人間性心理学はコーチングの「祖先(ルーツ)」とでも言うべき学問のうちの一つで、「第三の勢力」と呼ばれていた。
これは20世紀前半、アメリカの心理学界では「行動主義」と「精神分析」という2つの思想学派が主流を占めていたため。 ・行動主義
行動主義は人間を外側から考察し、人間の思考よりもその行動を研究対象としていた
・精神分析
精神分析の研究者達は、人間の内側に目を向け、その人自身も気付かないほど深く隠れたところにある動機や、その動機から行動様式がどのように形成されるのかを考察した。
どちらの学派も、その人自身の体験や、価値観、目標、そしてどういう人間になりたいと感じているか、といった所には手を伸ばさなかった。
カール・ロジャースやアブラハム・マズロー
1950年代になるとカール・ロジャースやアブラハム・マズローを日っと津とする心理学者たちが、人間は自分自身をどのように感じたり考えたりしているか、主観という面で彼らにとって重要なものは何か、という事を焦点とした心理学の体系を構築し始めます。
この研究が「人間性心理学」となった。
人間性心理学では、自己表現・健康・希望・愛情・創造性・意義といった問題をテーマとして扱った。
これらはつまり、「人間であるという事の意味」の解釈でもある。
人間性心理学の基本原則
人間性心理学にはいくつかの基本的な原則がある。
第一に、人間に対して楽観的な考え方をすること。
人間性心理学では、人間は成長と発展を望み、人間にとって自然な道は前に進むことだと仮定する。
人間は自己実現を求めており、人間の本質は信頼できるものであり、卑劣な衝動が渦を巻き、隙あらば自己主張しようと機会を狙っているような輩ではない。
マズローはこのように統括している
「自分自身の力で平和な気持ちになろうとするなら、音楽家は曲を創り、画家は絵を描き、詩人は詩を書かねばならない。人は自分がなり得るものにならなければならない。この心理的欲求こそが我々の言う自己実現なのだ。人間性心理学が取り上げるのは、人間が達成感を求める気持ち、つまり人間が実際に自分のなれるものになろう、自分がなれるもの全てになろうとする性質なのだ。」
・人間性心理学の原則
①人が自分自身を体験する方法は、心理学的に根拠のある観点である。
②人間の本質に関する楽観的な見解ー人間は自己実現を望んでいる
③一人一人の人間は、完全で、唯一無二の存在である。
④人は皆、かけがえのない尊い存在である。
⑤選択肢はないよりも、あったほうが良い。人は皆、選択肢を持っており、その選択肢から選んでみたいと思っている。
ここから言えることは、クライアントの手助けをしようとする者は、そのクライアント自身が生まれつき持っている成長の可能性を伸ばす必要があるということ。
アクション・プランを強要したり、特定の方向に進ませようとしてはいけない。
全体性
人間性心理学は人間を全体的な存在として扱います。
包括的な心理学であり、分析的ではない。もちろん人間を「精神」と「身体」と「感情」といった部品に分けることが何か役に立つことは理解していますが、この「部品」の研究から人間全体の性質を導くことは不可能。
解剖学を研究しても生きて呼吸している人間は理解できない。わかるのは身体の各部が互いに関連し合っていることだけでしょう。
ライフ・コーチングではクライアントが人生の様々な局面を結び付けられるようにサポートしますが、ビジネス・コーチングでは主にクライアントの人生における仕事という側面に取り組む。
個人の独創性
人間性心理学では個人の独創性も重要視します。
コーチングには方程式はなく、一つの規格だけでは、全員に合わせられないから。
人間は十人十色なので、その違いは尊重されなければならない。
人間性心理学では、人間はいくつかの選択肢を持っており、その選択肢から選んでみたいという気持ちがあると考える。
コーチはクライアントが選択肢し、責任を引き受けることで、自分の未来を創るアーティストになるようにと勧める。
無条件の肯定的関心
無条件の肯定的関心は、「クライアントをありのままに受け止めて尊重し、セラピストの意見や選択肢を押し付けない」という事を意味している。
カール・ロジャース
「私がある種の人間関係を提供できるなら、その相手は自分の中に、その人間関係を成長と変化のために使う能力がある事を発見するだろう。そして自己の成長が引き起こされるのだ。」