GROWモデル
GROWモデル
GROWモデルは、「はじめてのコーチング」の中で、コーチングの基礎として紹介されている。
1980年代初めにインナーゲームをヨーロッパにもたらした1人であるグラハム・アレクサンダーによって最初に考え出された。
GROWはGoal(目標)、Reality(現実)、Options(選択)、What will you do(意志)の頭文字をとったもの。
Goal(目標)の「G」
目標とは実体を伴った夢である。目標はクライアントが望んでいる事であり、変化を伴う。
目標には2種類ある。
①最終目標
これは究極的な達成対象ですが、本人のコントロールはここに及ばない。そこには、沢山の他の人々と社会システムが関わっている。
②プロセス目標
最終目標を達成するために必要な遂行能力のレベルにある。
私たちは皆、「関心の範囲」を持っている。これは私たちが興味を向けている部分で、多くの社会システムが収束している。この関心の範囲の中に、私たちが行動を取り、変化をもたらすことのできる「影響の範囲」が含まれている。
例えば、私たちは経済状況や賃金水準に関心を寄せることがある。これは、私たちが生活し仕事をする地域社会のシステムや経済・政治システム、また業界固有の要因など、多くのシステムがもたらした結果ですが、私たちは選挙で投票することができ、私たちが望む行動によって物事は変えられる。これらは全て影響の範囲内にあること。
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プロセス目標は影響範囲の中にある。これは最終目標を達成するために必要な遂行能力のレベルです。
最終目標がシニア・マネージャーへの昇進であれば、そのレベルまで遂行能力を上げることが必要。
ウィットモアは「最終目標はひらめきだが、遂行能力の目標は具体化にある」と述べている。
ビジネス・コーチングでは、プロセス目標を、ビジネス上の最終目標を達成するために必要な職務遂行能力のレベルに設定することで、遂行能力を高める。
目標設定はビジネスの重症な部分である。目標設定には様々な方法があり、多くの企業は「SMART」を活用している。
これは
・Specific(具体的)
・Measurable(計測可能)
・Agreed(合意済み)
・Realistic(現実的)
・Timed with a deadline(期限付き)
の頭文字を取ったもの。
ウィットモアはさらに
・Positively stated(肯定形で表現される)
・Understood(理解されている)
・Relevant(関連性がある)
・Ethical(論理的である)
の頭文字を取った「PURE」という言葉を加えている。
また彼は、「目標は取り組みがいのあるもので、合法的であり、環境に配慮し、適切であり、記録されるものでなければならない」とも言っている。
Reality(現実)の「R」
物事を変えるには、自分が何を持っているかを知る必要がある。つまり自分の出発点を知る必要がある。
私たちは自分がいる所から出発しなければならない。そのため希望的観測や批判、行けん、願望、恐怖などにとらわれることなく、自分がいる場所を知る必要がある。
コーチはクライアントが今の現実をできるだけ客観的に捉えられる手助けをする。
例えば、クライアントが次のように言ったとします。
「金曜の午後はジムに行くと決めていました。でもいざその時になるとジムにはいかず、家でテレビを見て過ごしました。なんだか疲れていたんです。」
この説明は「金曜は本当にジムへ行きたかったのですが、私は怠け者で行きませんでした。ごろごろしてテレビを見ました。私に必要な事は自制力なんですよね」という説明より客観的です。
後者の説明では、一種の解決策「自制力」が示されていますが、現在の状況や目標は正しく認識されていない。こうした「抽象的な」自制力は、結局身につかず終わってしまいがち。
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クライアントが現状を、事実に基づいた具体的な点から理解していくにつれて、コーチングはいっそう効果的になってくる。
クライアントが他の象限のエリアに進もうとするなら、コーチはクライアントを事実に基づいた具体的な象限のエリアに連れ戻さなければならない。
OPTIONS(選択)の「O」
「選択」の段階は、正しい答えを見つける事ではなく、ブレストで選択肢を検討することを意味する。
この時点では、コーチもクライアントも、正しい答えを知らない。
この段階の目的は、何をすべきかについて、より多くの選択肢を見つけ出すこと。
この段階は、クライアントが否定的な思い込みを持っていると困難なものになることがある。「何が可能なのか」、「自分の能力とは何か」、あるいは「他人を信頼できるかどうか」などについて、クライアントは否定的に考えてはいないでしょうか?
クライアントが自身の資質や人的資質の有無を凝っている場合もある。
そのようなクライアントは、自分の否定的な考えが「実際に当てはまる」と確信しているわけではないが、「やはり当てはまるのでは」と思い込んでいる。ここでコーチにとって重要な事は、「もしも何の制約も無かったら、どんなことができると思うか」についてブレストを求めること。
What wlii you do?(意志)の「W」
最後の段階では取るべき行動を決定する。
この段階では、コーチは、行動とその結果を明確にするために、多くの質問を行う事となる。
行動が決まったら「それをいつやりますか?」という質問がカギとなる。
これには2つのタイプの答えがある。
①「水曜日にやります」といった明確な日時
②「何日になるか正確には分からないが、週末までにはやる」といった期日
「その行動で達成できますか?」という質問は有益。行動で完全に目標が達成されるという事はない。それは最初のステップであり、クライアントは、行動の結果を最終目標に結び付ける必要がある。この質問は、予期しない副作用をもたらすこともある。
「どのような障害が起きると考えられますか?」という質問も役立つ。「どのようなサポートが必要ですか? どのようにそれを手に入れますか?」という質問は、クライアントが人的資源を必要としている場合に、それを積極的に求めることを手助けする実際的な質問です。
最後にクライアントがアクション・プランを明確にしたら、コーチはその行動に対する取り組み度を10段階で評価するようにクライアントに求める。評価が10点満点にならない場合には、コーチとクライアントは、アクション・プランを少し修正するか、期限を伸ばすことが必要になる。
GROWモデルはコルブの経験学習サイクルに良くあてはまる
GROWモデルはどのようにこのサイクルに位置づけられるのか?
「目標設定」⇒経験の提案
「現実」⇒省察と観察によって究明される。
「選択肢」⇒概念化によってもたらされる。
「行動」は、仮説を検証するための計画的な経験