能力開発コーチング
背景
コーチングは、ポジティブ心理学やインテグラル・メンタル・トレーニング(IMT)と同じ柄理念に基づき、同じ原理を用いていますが、とりわけ能力開発コーチングにその傾向が強くみられる。
これらの違いは学習と能力開発のメソッドにある。
コーチングは「行動学習」と「フィードバックを介した学習」を重視し、ポジティブ心理学は「内省的学習」を、IMTは「無意識的学習」を重視する。
コーチングとIMTはいずれも未来志向であり、問題解決に焦点を合わせ、行動を重視し、経験に基づくものとなっている。
能力開発コーチングは、この10年の間に私たちがIMTとコーチングを統合したもの。
ポジティブ心理学
ポジティブ心理学は、人間を「自ら組織・管理して環境に適応する存在」としてとらえ、それまで無視されていた次の2つの分野に焦点を当てて心理学の流れを変えた。
①普通の人々の生産性と健康の増進
②問題発生を防止するための能力開発資源の利用
IMT
IMTとは、メンタルスキル、態度、プロセスを扱う、組織的で長期的な能力開発トレーニング。
IMTは思考よりもイメージを重視し、問題解決よりも資源の発見と能力開発に重点的に取り組む、認知と感情に関するトレーニングである。
IMTは次の分野の研究に基づいて開発された
・変性意識状態
・体と心の関係
個のとレーニングプログラムは1970年代にスウェーデンの様々なナショナルチームや、オリンピックチームと協力してテストされ、1970年代後半にライフスキル・トレーニングとしてスウェーデンの学校制度に導入された。
1980年代には健康や仕事の分野に取り入れられ、1990年代初めに自己開発のメソッドとして一般に広まった。
能力開発コーチングと問題解決コーチング
これらは異なる前提を持った2つのアプローチです。
問題解決コーチングは、クライアントが問題解決に必要とされる資源を全て持っている事を前提とする。
能力開発コーチングでは、クライアントは多くの場合、目標達成のための新しい資源・スキル・行動の開発を必要とすることが前提とされている。
能力開発コーチングは、変化について、IMTやポジティブ心理学と同じ考え方を持っている。
一方社会のほとんどの分野は依然として、問題解決モデル、または臨床モデルに倣っている。問題解決コーチングモデルでは、人は困難な事態や重大局面が原因となって変化を求める。
能力開発コーチングはスポーツ・モデルに基づいたもので、現状に満足しており、そしてさらに良い状態を求めて努力とトレーニングを続ける力があることを意味している。
そのため、問題解決コーチング・モデルでは変化の方向は常に問題から遠ざかることとなり、時には結果がさらに悪くなる(小難を逃れて大難に陥る)こともある。
変化を求める感情の基礎をなすものは、主に「不満」であり、変化のためのアドバイスをクライアントが批判として受け取れば、強い反発に繋がる事がある。
問題解決コーチングでは進歩の後には状態維持が続き、問題解決の後には、停止状態がやってくる。
能力開発コーチングは「人生」とは継続的に自分を向上させる旅であると見なしている。
また、問題解決コーチングでは、アドバイスされた「変化」の内容が、非難や不信、間違いの指摘として解釈されるとクライアントの反発を招くことがある。
能力開発コーチングにおいて、安心や保証は、クライアントが居心地良く感じるコンフォートゾーン内には存在せず、「変化」そのものの中に存在する。
能力開発コーチングは生活の質を上げるために必要な刺激を与えたり、重要な努力目標を課したりする。
コーチングは行動を重視し、行動による学習を基礎としている。課題をこなすことで経験が築かれ、フィードバックを通じて適切な変化が生じる。
問題解決コーチングの目標は「問題発生以前」の状況に戻ること。
一方、能力開発コーチングは、事前の対策を講じて、現在より良いだけでなく、問題発生以前より良い状況を作り出す。
この状況には「問題解決」も含まれているが、その特定の問題に取り組む事は必要ではない。
問題をもたらす思考とイメージの罠
人間の脳はいとも簡単に、問題をもたらす思考とイメージの罠に陥る。これには3つの理由がある。
①進化上のメカニズム
②感情的要素(恐怖のような感情は、非常に簡単に我々の心を捉える)
③「問題」は「目標」よりも具体的な物であることが多い
この知覚作用を変えるために、能力開発コーチングは、恐怖などの否定的な感情を減らし、目標を明確で魅力的なものにするべく取り組む。その一部が肯定的に考え話すのを学ぶことであり、そして「問題をもたらす言葉」を「進歩をもたらす言葉」に置き換えることを身につけること。
能力開発コーチングとサイコサイバネティクス
さらに素晴らしい進歩を遂げるために、能力開発コーチングでは、メンタル・トレーニングの課題と目標計画法を組み合わせて用いる。問題解決コーチングはクライアントの目標が明確になり、価値観に基づく物になったときに終了する。
能力開発コーチングは、抽象的な目標をイメージに置き換え、その後その目標を組み込んだ計画を作成する。
これにより自律的なプロセスが開始されると考えられる。クライアントは、自分がより創造的になったこと、そして意識的な問題解決をしなくても、容易に解決策を見つけるようになったことを報告している。
クライアントは何が自分を目標に導いたのかを意識せずに目標に到達する。
まとめ
能力開発コーチングや自己開発コーチングは、次の例のように、色々な方法で一般的なコーチング・メソッドを補完していく
・能力開発コーチングは、問題を抱えるクライアントにも、継続的な向上を求めるクライアントにも、同じように取り組む。能力開発の目標には自律的な問題解決が含まれることが多い。
・能力開発コーチングは、魅力的な目標に到達するために必要な能力を発見し開発するための課題として、メンタル・トレーニングの課題を利用する。
・能力開発コーチングは、プログラムの目標に対するイメージを活用するが、この目的は、アクション・プランと課題の補完として自動的プロセスを開始することにある。