オレラップ・フリスコーレの教育内容の特徴
オレラップ・フリスコーレの教育内容の特徴
オレラップ・フリスコーレは1867年、クリスティアン・コルの学校理念に賛同したらスムス・ベターセンらによって、青年農民のためのフォルケホイスコーレとして創設された。その後、様々な経緯を経て、1920年代より新しい学校として歩み始め、自由な教育内容を取り入れることで、受け入れる年齢層も学校施設も拡張していった。 オレラップ・フリスコーレの教育理念
オレラップ・フリスコーレは、国家からの抑圧、強制学習と暗記学習に対する抵抗といったコルの学校理念を継承している。
掲げられている教育理念の内容は下記の通り
・学校は個々の児童生徒の性格を尊重し、発展させる環境と場を創造する必要がある。
・学校は児童生徒の好奇心と想像力を刺激していく。学ぶ意欲、生きていく熱意を与える。
・学校は児童生徒自身に、能力開発への責任と自らの学習計画を提示する必要がある。また、そのためのツールを提供する必要がある。
・学校は、児童生徒の事をよく知り、社会的、文化的、歴史的な文脈の中の知識を与える必要がある。
・学校が、親、児童生徒とスタッフの間のコミュニティであり、開放性と共感に基づいている。
・学校は、児童生徒と親の生活の自然な一部である必要がある。
この学校は、グルントヴィとコルの思想に触発された幸せな学校づくりをしていく。全ての児童生徒は、唯一無二の存在であることを理解する事が重要。このことを正しく理解し、児童生徒を評価しなければならない。自分だけが唯一無二の人物であるということを信じるようになってはいけない。全ての人々が唯一無二である。
学校について
学校は個人を尊重することを基本としている。学校は、地域社会の仕事や個人の成長のための学習の場であり、一つのコミュニティである。ここでの個々の経験を、権利や義務という方法で全ての社会コミュニティに貢献していく。
学校は安全な環境を維持し、それらの安全な環境が児童生徒の共通の経験に活かされていく。オープンステージイベントやテーマ週間の設定により、年齢を超えて相互作用を促す経験をしていく。
学習内容ついて
包括的、多様性のある学習内容、またその方法を求めていく事が必要である。具体的には、自然野外活動としてキャンプの実施、文化的イベント、彫刻や芸術作品の創造活動、音楽や演劇活動などである。特に地元の音楽学校と連携をとりながら、オープン音楽室での合同活動を展開する。
私たちの教育は、歴史的・詩的でなければならないとしている。ティーチングは活気と詩的な言葉で語られ、聞く者たちが創造的に刺激されなければならない。授業時間以外にも、児童生徒と教員は対話と協力の中で信頼し合い、学び合う。
最終試験科目について
・デンマーク語
・英語
・ドイツ語
・数学
・物理
・化学
・生物
・地理学(選択)
となっており、義務教育終了時の最終試験科目は公立学校と同じ内容となっている
典型的な一日
朝8時15分、鐘がなると朝礼のためにメインホールへ全員が集まる。音楽教員による祈りの時間がある。誕生日の生徒がいれば、必ずお祝いの歌を全員で歌う。
その後、クラスに分かれて9時50分まで授業。授業終了後、30分の休憩。再び、午前11時50分まで授業。高学年クラスは13時50分、あるいは14時45分まで授業。
休憩中の活動は様々である。グループ毎にコンピュータールームのある図書館での読書や体育館で卓球を行ったり、屋外トラックでサッカーやソフトボールを行う。各エリアで、担当教員が見守っている。
「音楽と物語の時間」がある週は、通常の授業に加えて、全ての児童生徒が時間を共有する。「交響曲第9番」の合唱は、毎年全員で歌っている。
「物語の時間」について
物語の読み聞かせは、オレラップ・フリスコーレの重要な部分となっている。18967年に学校が創立して以来、教員たちは様々な読み聞かせを実践してきた。
「聖書物語」「神話」「英雄伝説」「自然と歴史物語」などである。語り手は、言葉の裏側に感じるものを表現することが重要となる。
教員は情熱的であるだけでなく、あらゆる要素を考慮して物語を選択していく。授業で児童生徒に物語が語られる時、児童生徒は頭の中にそのイメージを形成し、個々にそのイメージを作り上げていく。そこには、「正しい答え」というものは存在しない。物語の世界において教育的な値は測定できないのである。
物語のイメージは、テレビやコンピュータ画像に対抗できる程特別な物である。物語のフレームづくりは、朝の歌の時間にある。前日の夜に体験した個人的な小さな出来事ー例えば、動物を捕まえたこと、家での楽しいイベント、学童保育での体験などを朝の歌の時間に児童生徒は話す。
教育内容に支障がない限りは、授業時間の導入には短時間の物語タイムが含まれている。その内容は、おばあちゃんの話やアフリカの話、ひょっとしたら狐の話かもしれない。
授業は40分となっている。授業以外に、毎週、特別な物語の時間がある。授業終了後の午後4時から午後5時までにお話しタイムが設定されている。音楽史、動物や魚の事、『みにくいアヒルの子』などといったアンデルセンの物語など様々な領域の事を、物語を通して学んでいく。外部からのゲストテーラーも常に歓迎されている。
まとめ
以上が、オレラップ・フリスコーレの教育理念などの内容である。代表的なフリスコーレであり、全てのフリスコーレに共通する基本的な内容が含まれていると考えられる。特に注目すべきは、「物語の時間」である。この授業は全てのフリスコーレで実践されており、グルントヴィとコルの教育理念を支える根幹となっている。
オレラップ・フリスコーレの校長であるヤコブ・リンゴーも神話や創作物語を通して歴史を語ることがグルントヴィの教育理念として重要な内容であると言い、声による表現について次のように語っている。
「話すこと、聞くことという関係性の中で、想像力が高まっていくことに繋がる。現在はコンピュータや映像が与えられすぎており、自分でイメージ喚起する力が弱くなっている。子供たちは自分なりのイメージを作っていくことで、自分だけのファンタジー、つまり物語を自分の中に育てていく事ができる。また、最初にみんなで一緒に声を出して歌う事で、他者の声を聞き、他者の存在を認める事ができるようになる。共に声を出し、聞き合い、歌う事は、子供たちの発達にとって不可欠な要素であると考えている」