やつし
やつし(やつす/ヤツシ・擬)」は、日本の昔話・神話・宗教儀礼
やつす(俔す/擬す)」は古語で、
もともとは「姿を変える」「装う」「粗末な格好をする」という意味です。
現代語に近い意味:
• 「身をやつす」=身分や地位を隠して質素な格好をする。
• 「姿をやつす」=本来の姿を隠し、別の存在になる/変装する。
たとえば『源氏物語』でも、「高貴な人が身をやつして庶民のように暮らす」描写があり、
「やつし」には「仮の姿」「隠された本性」「変身」のニュアンスが含まれます。
民俗学や昔話研究の文脈では、「やつし」は通過儀礼の一部としての変身・仮装・変容を意味します。
例:
• 『灰坊』では、主人公が汚い姿(灰まみれ・乞食のような姿)になる。
• 『姥皮(はだかわ)』では、女性が皮をかぶって老婆になる。
• これらはいずれも「やつし(変装・仮の姿)」の形で、
一時的に社会的地位を失い、境界的存在(リミナルな状態)になることを表しています。