Dr.Fの格闘技医学
https://scrapbox.io/files/63741a941c3650001ffd0001.png https://amzn.to/3V2vMfx
視機能と運動
身体はどこから動く?
人間は大体80%の情報を視覚に頼っている
格闘技の動きにおいて最初に動くのは眼
眼の機能を獲得することがパフォーマンスアップに確実につながる
普段の生活でも人間は他人の目線に非常に敏感
一流選手は打つ場所を集中的に見るだけではなく、いろんなポイントを視野に入れて瞬時に動くことができる
視点を上手にコントロールする -> 技の威力up
視点を切り替える -> 試合展開を左右
視点と打撃威力の関係
ターゲットの先を打つつもりで攻撃する(ミット打ちならミットではなくミット持ちをめがけて打つ)
人間が目標物に手を伸ばす際のスピードは「ゆっくり -> 早く -> ゆっくり」の過程を必ず辿る
物理学的には早いスピードでぶつかった方が威力出る
目標物の付近で失速してはいけない
身体は視覚情報を元に「次の瞬間どこにあれば良いのか」を察知し、その通りに自らを運ぼうとする
相手を後ろに下げたいなら、視点自体を目標物の先に据えて打つ
例えば、パンチを打った結果、相手が少し下がるであろいう場所に視点を置く
視点を次の瞬間そうなってほしいところに先におきつつ、動く = あらゆる格闘技において共通する公式
動く相手の捉え方
対象だけではなくて背景も一緒に捉える
背景を視野に収めれば、背景と対象物の距離の「差」で「動き」を捉える
野球でボールとるときなんからボールとその背景も見る
中心視と周辺視
中心視: 虫眼鏡で1点を観察するようなイメージ
周辺視: 星空全体を眺めるようなイメージ
戦闘中に相手の顔を見ながらも全体を見ているなら周辺視で相手を捉えることができている
カウンターやいろんな方向からくる相手の動きに対応しやすい
中心視だと相手の動きが捉えにくい
相手の目線のコントロール
輻輳反射: 人差し指を目の前において、指を近づけたら眼は中央による。遠ざけたら眼は外側に離れる
遠い距離から一気に飛び込むか近い距離から急に離れると相手の服装反射を引き出せる
遠い距離から一気に飛び込む -> フックなどの外側の攻撃が当たりやすい
近い距離から一気に離れる -> ストレートなどのまっすぐな技が当たりやすい
型に秘められた眼の動き
空手の太極や平安などの型は基礎の動きでは相手が追ってくる左側に向きを変える際に最初に動くのは眼
眼が動く -> 頭部が動く -> 脊椎が回旋 -> 眼・脊椎の回旋が元に戻るように全体が動くという運動連そのプロセスがある
向きを変える時に眼から動かすとスムーズに動ける
眼は運動連鎖を一番最初に生み出すスターター
呼吸
コンビネーションを打つときは横隔膜を1回動かす間に技をいくつ入れるかでスピードが変わる
腰椎の周りには多裂筋群という小さな筋群がある
多裂筋群は腹筋群の深層筋である腹横筋の拮抗筋
多裂筋群が萎縮している場合、拮抗筋である腹横筋も弱くなっている
→ 腰痛を引き起こす原因
腕や脚など大きな筋群が収縮する少し前に、腹横筋が収縮する
腹横筋はコルセットのように腰椎を取り巻き、収縮すると腹圧がグッと高まり、腰椎を守る役割をする
腰を守る -> 筋力を発揮する = 人間の体にあったプロセス
パンチを出すとき息を吐きながら腹を引っ込めるように腹横筋を強く収縮させると強いパワーが生まれる
蹴りも同じく吐きながら蹴ると内臓が腰椎側によるから足が上がりやすくなる
固有感覚
骨や関節の位置、角度、圧などの情報を脳に送り、自分の体の情報を知覚する能力(目をつぶったまま腕がどれぐらい曲がっているか感覚的にわかること)
固有感覚は視覚情報を処理する能力を向上させつつ、視覚情報が少なくても動ける能力を向上させる
不安定な状態から動いたり、アスファルトではなく山道を走ったりするなど自然の中でのトレーニングで固有感覚が養われる
関節や靱帯に固有感覚神経終末が多く存在している
靱帯のの長さや圧を情報化して脳に送る = 情報入力の器官
筋肉もテンション(緊張)とリラックス(弛緩)の度合いをリアルタイムに脳に送る = 情報入力の器官
相手と接触する際に武器としての出力だけではなく、、 関節・靱帯 -> 脳 <- 筋肉 みたいに入力としても使うべき
関節角度
関節には最も筋力を発揮できる角度がある
table: 理想的な関節の角度
肘を曲げる ボクシングでのアッパーやフックのインパクトの瞬間・柔道での吊り手の角度 90°
肘を伸ばす ストレート・手刀での氷柱割り・思いドアを押し開く 70°
膝を伸ばす ローキック 60°
前進(体幹の角度) 相手とぶつかる 21°(仙椎と脊椎の角度)
後ろ足の股関節の進展 向かってくる相手を受け止める 30°
肘を伸ばすは回内、肘を曲げるは回外の運動を加えるとより筋肉の出力が高まる
伸張反射
筋肉や腱は縮む(収縮する)のは得意だが、伸ばされるのは非常に苦手な組織
限界を超えて伸ばされると断裂するから
それを防止するためにセンサーとして筋紡錘・腱紡錘が備わっている(感覚神経と連結)
伸張反射: 筋や腱が伸ばされてときに反射的(脊髄から命令される。脳を経由しない)に縮もうとする動き
伸張反射を利用して動作を行うと早い動きになる
重力
ジャンプすると 落ちる → 上がる という動きになる
落ちるの時は重力に乗る、最下点で足底に生まれた反作用(地面が足を押し返す力)を利用して上がる(バスケットボールがバウンドするのに似た動き)
上がろうとする筋肉だけを使うのではなく、落ちる反作用も使ってジャンプをする
マウントポジションでの重力の反作用
上になったら数センチ単位でOKなので骨盤をピコピコと上下に動かす
= ボールが小さなバウンドを繰り返すかのように重力→反作用→重力を繰り返す
相手がどんなに動いてもその局面、局面で瞬間的かつ断続的に上から下へ加速を伴った重力がかかるので相手を制しやすくなる
モーターユニットとインパルス
筋力は筋肉の長さと断面積に比例する
= 同じ長さなら断面積の大きい方が筋力は強い
筋肉を構成している筋繊維は筋原繊維と筋形質から成り立っている
筋原繊維: アクチンフィラメントとミオシンフィラメントというタンパク質の束で構成
増えれば増えるほど収縮する力が強くなる
筋形質は力の発揮には直接的に関係ないと言われている
筋肉が太い・太くなったと言ってもその中身によって違うため
筋原繊維を増やす -> 高重量低回数の負荷
筋形質を増やす -> 低重量高回数の負荷
モーターユニット: 運動神経細胞から運動神経が枝分かれして筋繊維につながっている。1個の運動神経細胞とそれが支配する何本もの筋繊維をまとめてモーターユニットという
運動神経細胞にはサイズがある(小さなものもあれば大きなものもある)
小さなモーターユニット = 持久力に富むが瞬発力がない
大きなものはその逆
筋繊維には I, Ic, IIc, IIac, IIa, IIax, IIxの7種類がある
後になればなるほどサイズは大きい
Iは遅筋
IIは速筋
Iは一番最初に動員されるモーターユニットの筋繊維、IIはもっとも動員されにくい、しかしながら動員されれば爆発的なスピードとパワーを発揮するモーターユニットの筋繊維
サイズの原理
運動するとき全てのモーターユニットが使われているわけではない
大物は最後に登場する
超大物であるIIxはなかなか登場しない
以下の場合では例外的にいきなりIIxを含むモーターユニットが使われている可能性あり
火事場の馬鹿力
エキセントリックな収縮(筋の長さが長くなりながら筋が収縮する状態)
気合いや掛け声(実験結果あり)
暗示
ウェイトトレーニングには渾身の力を出すことでサイズの原理を飛び越えられる脳と身体を作るという側面もある
インパルス
インパルス: 神経線維の中を伝わっていく電気信号の活動電位
発生頻度を高めると筋力が上がる
e.g. 硬いものを握る -> 5,4,3,2,1 と数えて0のタイミングで握り込む
0!, 0!, 0!, 0! とさらに握り込む(握って戻してではない)とインパルス発生頻度が高まる
5,4,3,2,1の段階で強く握るイメージをしておくことでも強く握れる(インパルスを予め発生させておく)
応用としてパンチを1回打つ前に何回か打つイメージをしておくとパンチが強力に
肩甲骨と上肢
手先は脳と密接に結びついている(ホムンクルスの図)
手とそれに連なる上肢を動かすことで多くの脳細胞を動員できる
KO
顔面
頚椎の数はどんな人間でも7つ
一番上の第一頚椎は環椎と呼ばる
第二頚椎は軸椎
軸椎に環椎が乗っかり、環軸関節を形成している
環軸関節の働きで首が回る
環軸関節が回るように攻撃しなきゃダメ
ボディ
レバーや胃そのものは痛くない
内臓を覆っている腹膜に神経が集中している
金的は精巣白膜があるから攻撃されると激痛
ボディを効かされる =
意識ははっきりある
打たれた部位より広範囲に鈍い痛み
ボディブローがじわじわと効く理由
1回のインパルスでは筋肉の収縮をずっと維持できない
1発もらった後にすぐに2発目くらったら筋肉の収縮は右肩下がりに落ちていく
奥まで届く攻撃
人間の腹部は身体表面に痛み刺激を受けるとその瞬間、筋肉をギュッと強く収縮するようになっている
比較的柔らかいサッカーボールやバレーが腹に当たって効くのは柔らかいものが当たっても収縮の反射性が強くおきず、腹にめり込むから
最初から硬い拳じゃなくて柔らかく当ててめり込ませると効く
(ボディに関しては)二重の極みは理にかなっている
1回の打撃で2回、2箇所に攻撃が加わるので筋収縮が低下した部分に刺激を与えられる
吸気の瞬間のボディが一番効く
下段
痛覚受容器:
関節やその周辺にたくさんある
腱にもあり、腱は骨膜に付着
骨そのものにはないが、骨膜には大量にある
https://scrapbox.io/files/63741a941c3650001ffd0001.png https://amzn.to/3V2vMfx