イヤな気持ちを消す方法
https://scrapbox.io/files/63659e98ee27fb001d906da4.png https://amzn.to/3fCYKUk
はじめに
定義
トラウマ: 精神的外傷(※俗な言い方をすれば心が負った大きな傷)
トラウマを抱えるほどの強烈な体験の記憶を持つ人は少なくない
それは悲しい、辛い、許せないなどの極めて強い情動を呼び起こす
強烈なイヤな体験をする
トラウマになる or あっさりその体験を乗り越える のどちらか
両者を分けるのは脳の使い方
イヤな記憶を「忘れる」ための脳の使い方がある
脳は体験したことを勝手に記憶する
脳がそれをどう思い出しているかが問題である
イヤな記憶が表に出てこないようにすることは可能
一瞬で直ちに忘れることはできない
長期記憶化し、トラウマになることを防ぐ方法を本書で学ぶ
(これは)自分の記憶をコントロールするための脳の使い方を学ぶ本
序章 満たされない心、傷ついた心とは何か。
¥ 本来、マイナスの出来事の記憶は、人間から生きる力を奪うものではない
強い怒りの"信念"が強い怒りを生み出す
自分の欲望が思うようにならないから苦しむ
code:_
e.g.
例えば誰かがあなたをバカにする
馬鹿にしたのがどうでもいい人間の場合 -> 気にならない
馬鹿にしたのが目をかけた部下であった場合 -> 最悪の結果として「決して許せない」というレベルまで怒り心頭に発する
なぜか?
そうあらねばならない(良くしてあげた人間は恩を返すべき)という「信念」があるから
その信念を否定されることが怒りにつながる
その根底には「自分は常に正しい」という認識がある
「自分が間違っているかもしれない」「相手の方が正しいかもしれない」という考えはほとんどない
相手が必ず自分の思いに応えなくてはならないという法律はない
常に自分の方が正しいという評価は誰も下してはくれない
なぜ考え違いをするのか
誰かに裏切られたとき、少し考えを巡らせると容易に立場を逆転できる
向こうからしたらこちらが裏切ったのかもしれない
こちらが考えている思いが、他者から見てとんでもない考え違いであることは往々にしてある
「自分は正しいのだから、自分が思っているようにならなければならない」 = 信念 = 自我そのもの
自我が維持される状態が最も快適 -> その状態を維持しようとして考え違いが考え違いであることに気づかない
「なぜ私だけこんな目に遭わなければならないのか」 <- これ
「今まで真面目にやってきたのに」という心理が背景にある
つまり「真面目に生きていればひどい目に遭わない」という信念
ひどい目にあう(災害に見舞われたり犯罪に巻き込まれたり)リスクは等しく確率の問題
信念のせいで立ち直れない
人間の脳はマイナスの出来事を記憶する
定義
クライシスサイコロジー: 大災害や大規模テロが起こった際に人々をその恐怖体験から解放し、それをトラウマにしないための心理学
本来マイナスの出来事は生きていくことに役立つ
嫌な記憶を呼びさまさないようにするには「忘れる」ことが重要
自我は過去の記憶によって成り立っている
過去の記憶によって自分の中に間違った信念が出来上がる -> 自我は小さく歪なものになり、自分を苦しめる
嫌な記憶を忘れる or 「大変だったけどいい経験をした」とプラスに評価できる -> 円満な自我
円満な自我を作る方法を本書で解き明かす
心は鍛えられるものではない
よりよく生きるために必要なものは「心を強くする」とか「心を鍛える」ことではない
「心を強く持ちなさい」 -> ニュアンスとしては伝わるし大切
しかし、それが具体的にどんな状態を指すのか個々人で共通の認識を持っていない
「折れない心」「心を鍛える」という言葉で心がまるで鍛えることができるもののように錯覚
心は存在しない
便宜上心と呼ばれているものは、脳の情報処理の状態のこと(科学的には現象)
現象をテクニックで強くしたり鍛えたりすることはできない
第1章 なぜイヤな記憶ばかりが甦るのか
同じ失敗をしないために記憶はある
そもそも人間はイヤな出来事をよく記憶するように作られている
特に強烈な怒りや悲しみなどの情動を伴う体験をした場合、ことさら強く記憶に刻まれてしまう
次に同じようなことが起こりそうなときにそれを避けるために記憶をする
避ける理由は「生命のリスクがあるから」
人間が生存競争に勝ち抜くために進化した過程でそうなった
今となっては上記能力が原因で大きな苦悩を抱え込む
未来に目を向けるべきであり、もはや存在しない過去の出来事と戦うべきではない
記憶の中の痛みを取り除くための努力
イヤな記憶の出来事という言い方をすると「イヤな記憶の元になった悲惨な体験が問題だ」と考えるかもしれない
自分の体験をみんなに話して聞かせるグループセッションには一定の効果があるが、時間が経つうちに元に戻ってしまう
定期的に実施しないといけなくなるので時間や費用が必要
海馬と扁桃体がイヤな記憶を増幅させる
イヤな記憶から自分を解放するために過去のイヤな出来事の記憶に働きかける方法は脳の仕組みから見て効果が高いとは言えない
人間が過去のイヤな記憶に囚われるのは記憶そのものに原因があるのではない
記憶がどのように入れられ、どのように出されるかという点に問題がある
記憶がどんなにイヤな記憶であったとしても、それそのものに人間を過去の記憶に拘泥させる力はない
記憶を出し入れする仕組みは側頭葉ではなく、海馬と扁桃体と呼ばれる部分の働きによって生み出されている
海馬も扁桃体も大脳辺縁系に属する
海馬は短期記憶を一時的にためておく場所
側頭葉に出来事を投げ込んで長期記憶化させる役割も担う
側頭葉から長期記憶を引っ張り出したりするゲートの役割もしている
扁桃体は海馬に働きかけ、それが出し入れする記憶を増幅させたり弱めたりする機能を持っている
扁桃体が海馬に「強く思い出せ!」と命じると、人間は過去の出来事を強烈に思い出す
code:_
海馬と扁桃体の関係はいわばダムの放水ゲートの現場操作担当者と、コントロールセンターの放水量管理者のようなもの
管理者「思いっきり放水しろ」と命じる
↓
現場担当者「わかりました」 -> バルブを全開にする
逆に普段より少なくしろという命令にも順応する
イヤな記憶に囚われるのは、海馬と扁桃体が増幅の連携プレーを繰返す結果、そのイヤな記憶が前頭前野に認識のパターンを作るから
イヤな記憶 = エピソード記憶(一連の出来事)
前帯状皮質・尾状核といった部位も連携する
海馬はすでに知っていることは記憶しない
脳は知っていると判断したものを記憶しようとはしない
聴衆に「自分の腕時計の文字盤を紙に描け」といってもまず描けない(毎日何度も見ているにも関わらず)
海馬がその情報をすでに知っていると判断し側頭葉に投げ込んでいないから
失敗の記憶によって人は成長する
海馬が重要と判断し、長期記憶化する情報は「失敗」
ここでいう「失敗」はその人の生命を左右する情報のこと
それを記憶することができなければ次に同じ状況がやってきたときに危険を避けることができない
¥ 人間の脳は「失敗駆動型」
予期せぬ出来事を記憶する
予測に失敗すれば脳内ネットワークは新しいことだからそれを学習しようとする
逆に成功すればそれはすでに知っていることだから学習しようとしない
人間は物理的な痛みだけではなく、情報的な痛みに対しても生命の危機を感じる
現代社会でいうと、後者はお金を失うこと
→ 前章と本章で述べたことが人間が辛い記憶・悲しい記憶に拘泥し、囚われる理由
¥ 失敗とは予期に対する反対である
ブリーフシステムで未来を予測する
イヤな記憶、辛い記憶に悩まされるカラクリ(ポイントは以下の2つ)
1. 人間が持つ信念の問題
2. 大脳辺縁系の海馬と扁桃体のやりとりによって失敗の記憶が増幅される
信念: 個々人がこうあるべきだと信じる事柄を表す言葉
例)「人間を差別してはいけない」「核のない世界を実現したい」
日本では義務教育の道徳の時間に刷り込まれる
そこでの事例に当てはまらないことは信念とは考えない
「お金さえ儲かればいい」 <- 道徳の授業で教えられる事柄と反する
誰かにとってはこれも信念だが、道徳の授業で信念が形作られた場合、これを信念として受け止められない
人間愛や社会正義がプラスの信念だとすれば、増悪や差別のマイナスの信念も当然ながら存在している
code:_
著者が定義したコーチング用語「ブリーフシステム」:
個々人が強く信じて疑わない固定的な考えのこと
私はどういう人間なのか、相手といるときどう振る舞うのか、社会に対してどう働きかけるのかなど
その人が身につけている認識パターン(脳の前頭前野に蓄積)
未来の予期・予想はブリーフシステムによって行われる
予想に反したことが発生することで認識のパターンがずれる
前頭前野と大脳辺縁系の連携が「これは覚えておかなければいけない事象だ」と動く
海馬が失敗の情報を側頭葉に投げ込む
予期に反すること = 失敗
結果的に、信念に反する結果(自分の予想が外れたこと)が強く記憶されるようになっている
私たちの記憶は過去の失敗の集まり
感傷の記憶も失敗の記憶に分類される
成功の記憶は次に起こるかもしれない生命の危機を避ける役には立たない
成功している人にとっては次に成功するのは当たり前なので「知っていることは覚えない」というメカニズムが働く
海馬はその情報を側頭葉に投げ込まない
予期に反した成功は「失敗」として記憶される
子供の頃に深く愛された記憶 -> 実態は深く愛されていた時期が過ぎ去った喪失感や感傷の記憶。これも失敗よりに分類され記憶
※ここまでがポイント1(人間が持つ信念の問題)
小さな失敗を増幅させ、脳に刻み込む
※ここからがポイント2、扁桃体と海馬の情報処理の増幅
定義
扁桃体: 記憶のゲートウェイとして海馬が側頭葉から引っ張り出す時に海馬にその記憶を増幅したり弱めたりさせる働きを担っている
生命の危機に対して瞬時に反応するため
例)
山中でトラに出くわしたとき、間髪入れずに逃げなくては命の保証はない = 扁桃体が海馬に過去の失敗の記憶を増幅して引っ張り出すよう促す
トラに出くわしたことに匹敵する失敗の記憶をその人が持っていなくてもヘビに襲われた、自転車を漕いで転倒したなどの記憶を代替させる
その場合、普通に引っ張り出したら危機回避の反応が遅れるので扁桃体は海馬にそれを思いっきり増幅するように促す
結果的にとっさに行動を取ることができる
登校拒否が起こるメカニズム
登校拒否児童は扁桃体と海馬の連携プレーに苦しめられる典型的な例
例)
校門がトリガーでそれを見た瞬間にいじめの体験を想起(この場合校門はいじめの小さな関連情報)
しかも扁桃体は海馬に思いっきり増幅させて引っ張り出させる
-> いじめっ子が近くにいなくても強烈な辛さを追体験してしまう
登校拒否は信念にまでなってしまう
小さな関連情報に接するだけで失敗の記憶の増幅が繰り返されると、今度はそれが前頭前野に認識のパターンを生み出してしまう
前項では校門を見るだけで登校拒否児童は震え上がるが、その体験を繰り返すと今度は全く別の学校に通う生徒の制服を見るだけでも震える
結果、「学校も同級生もみんな敵」というブリーフシステムが出来上がる
その段階まで行くと自律神経にも影響が生じる
眼窩腹側内側部: 前頭前野にある視床下部と直結している部分
視床下部: 自律神経をコントロールする働きを持っている
ブリーフシステムは前頭前野での認識パターンである
↓
前頭前野のブリーフシステムとして登校拒否が起こる
↓
眼窩腹側内側部から視床下部に伝わる
↓
自律神経を刺激
結果: 学校という概念を思い浮かべるだけでパニックに陥る
さらに!
自律神経系が侵されると原始脳と呼ばれる脳幹にまで情報が届く
定義
脳幹: 中枢神経をコントロールする機関
中枢神経: 感覚、運動、意思、情緒、反射、呼吸など体内のあらゆる活動のコントロールタワーの役割を果たす = 生命維持の要
脳幹がやられると人間はあらゆる点で生命力を失う
人の特性はブリーフシステムで決まる
個々人の心理的特性はその人のブリーフシステムで決まり、それが人格という誰の目にもわかる形で外部に現れる
ブリーフシステム自体は1つではなく複数ある
¥ 葛藤の正体はブリーフシステム同士が互いに矛盾を起こすから
誤解されやすいPTSDとは何か
code:_
e.g. トラウマが人間の人格形成にとても悪い影響を及ぼす例
親から虐待を受けた人は人格的に問題のある人間になることが多い
虐待体験を繰り返し思い出して前頭前野に認識のパターンができてしまうから
(登校拒否の時と同じメカニズムで)小さな関連情報に接すると扁桃体と海馬の連携プレーで辛い虐待の記憶が思いっきり増幅されて引っ張り出される
我が子への虐待衝動へ
いかに過酷な体験でもトラウマ化をさせなければいい(過酷な体験を乗り越える)
ゴキブリにも慣れるトラウマ回避の方法
code:_
トラウマ回避の方法その1. 海馬が記憶を思いっきり増幅して引っ張り出すレベルを意図的に鈍感にする
その体験を繰り返して慣れる(それが自分の身に何も危険を及ぼさないということを繰り返して知る)
扁桃体は増幅ではなく逆に弱める働きもするが、慣れでその方向に働く
扁桃体は評価関数である
繰り返しで評価を変えさせる
どんどん弱まりトラウマ化をしない
どうやって登校拒否を治すのか
慣れることができる
いじめそのものに慣れることはできない
学校に行っても誰にもいじめられない状態がしばらく続くことで克服できる
一番手っ取り早い方法は転校
安全で身の危険がないことを繰り返し認識すると扁桃体の評価関数が小さくなっていく
運動会や遠足といった行事も普段の通学と同じように嫌うのは高次の抽象化能力によるもの(前頭前野によるもの)
記憶を引っ張り出せなければ忘れたと同じ
脳には階層性があり、新しくできた脳ほど抽象性は高く、階層的に上にある
table:table
脳の階層 その階層の脳が認識するもの
抽象度の低い古い脳 目の前に草があり、虫がいる
もう一段階抽象度の高い脳 陸があり、川があり、海があり、空がある
さらに抽象度の上がった脳 分子、地球、宇宙
階層的に上位にある脳は低位にある脳より優位
優位というのは、上位の脳が働いているときは、それよりも低位にある脳に介入ができるということ
大脳辺縁系よりも前頭前野の方が高次である
前頭前野の方が海馬や扁桃体よりも優位
前頭前野は海馬や扁桃体の情報処理に介入可能
code:_
e.g. 前頭前野は海馬や扁桃体の情報処理に介入可能の例(理性的に考える)
暴力団風の男が正面から歩いてくる
しかし、近くに警官がいることを認識することで安心する
警官が刑事の場合、暴力団と外見は同じである可能性はあるがそれでも安心するのは前頭前野の介入
恐怖がなくなり認識のパターンが変われば記憶に上がらなくなる
人間が一度記憶した情報を本当に忘れているかどうかは科学的にはわかっていない
引っ張り出せなくなれば忘れたと同じ
忘却: 前頭前野のパターンが薄れ、記憶の上がらなくなること
記憶のインデックスをなくせば、二度と引き出せなくなる
人間は同じではないことをあたかも同じようなものと認識して嫌な記憶とパターンマッチングさせる
嫌な記憶を引っ張り出さないようにするには引っ張り出すためのインデックスをなくす
インデックスとは前頭前野のパターンである
前頭前野のパターンを変える = インデックスをなくす
その方法は前述した慣れ(損害を被らないことを繰り返し認識)と理性的な思考
それで治らないなら自分に甘えている(好き好んで辛い記憶や悲しい記憶に囚われ続けている状態に甘んじている)
第二章 記憶とは何か。それとどう付き合っていくか。
¥ 脳は過去の出来事を自分に都合よく 時には都合悪く書き換えて記憶する
過去が未来を制約することはない
人は何もしなくても時間とともに嫌な記憶を黄金の思い出に変える事ができる
そうなっていないとしたら、記憶を否定する強い拒否感を持っている(記憶の中の自分もしくは相手を断罪しなければ気がすまない)
記憶に刃を向ければ、それは自分の身を傷つけるだけ
時間は未来から過去へと流れている
未来は時間が経つと現在になり、現在は時間が経つと過去になるため
過去にこだわるのは意味がないこと
過去は未来を制約してなどいない
記憶は本質さえ押さえておけば自力でどうにでもなるもの
それを知って自分に有利になるようにコントロールするのが賢い人間
記憶力は統合する能力で決まる
記憶: 機能脳科学的にいえば、側頭葉に入っている情報のこと
記憶はどう入れるかが問題ではない(入れる側の能力には個人差がほとんどない)
個人間で記憶力に差がつくのは「出す力」
記憶を出す能力 = 統合能力
脳が記憶を引っ張り出す時にそれを統合する必要があるため、そう呼ばれる
記憶を構成する情報は断片化されて側頭葉に入っている
脳はそれを引っ張り出すときは、バラバラになっている情報を1つに統合するという作業をする(これが統合能力)
サヴァン症候群は、なぜ統合能力がずば抜けているのか
ゲシュタルトに戻す統合力が記憶の鍵
サヴァン症候群の人は、記憶を構成する情報を側頭葉にバラバラに入れず、1つの塊として投げ込んでいる
e.g
大きな一枚のステンドグラスを箱の中に投げ込む -> バラバラに砕ける(この場合ステンドグラスが記憶、箱が側頭葉)
この時にガラス片一枚一枚についてそれがどういうものであるかという解釈はしない
引っ張り出すときは映画の逆回しで砕けがガラスが一気に1枚のガラス板に戻っていくシーンのように、元のゲシュタルトに寸分違わず統合される(記憶を引っ張り出す)
だからサヴァンは大著にしたためられた内容を一字一句間違えず諳んじる事ができる
記憶の投げ込まれ方に関してはサヴァン以外の人も一緒だが、一般人はサヴァンのように統合して元のゲシュタルトに戻すことはできない
記憶はウソをつくという仕組みとは?
日常生活で人間が記録を残そうとする時は静止状態にまとめる(1冊のノート、1枚の写真)
一方側頭葉に収められた記憶はバラバラ(前節参照)
過去の出来事を思い出すときは、それを体験した場所、時間、その時にいた相手、その人たちや自分が発した言葉や表情、周りの様子などバラバラな情報を統合する必要がある
統合するのは思い出す瞬間
統合される記憶は毎回異なったストーリーで構成されるゲシュタルトである
※ゲシュタルト = バラバラなものを統合してひとまとまりの状態にしたものを指す言葉
= 1日に何回も思い出す記憶でも、その度1回1回統合(記憶としてのゲシュタルトを再構成)されている
☆ つまり、記憶は過去の出来事を忠実にトレースしたものではない(過去を正確に伝えるものではない)
統合失調症は統合がうますぎる
統合失調症: 現実世界として本来統合しないものまで現実のゲシュタルトに入れている(e.g. あの人が私を攻撃しようとしている)
嫌な記憶ばかり蘇ることと統合能力の関係:
誰に聞いてもそんな事実はないものを統合しているのである意味統合能力は高いと言える
それを自分に不利になるように使ってしまうから苦しむことになる
現在は過去にベストの選択を積み重ねてきた結果
嫌な記憶にとらわれる人 ≒ 統合失調症
(どちらもわざわざ自分の不利になるように記憶を統合している)
前述したように私たちの記憶は過去の出来事を正確に再現するものではない
それもその人が自分に都合よく(あるいは都合悪く)書き換えている可能性もある
過去の記憶に苦しんでいるのは自分に都合が悪いように記憶を統合している
過去の記憶を楽観的に考えるだけで記憶の内容は随分変わる
¥ 現在は、過去にベストの選択を積み重ねて出たベストの結果
「選択がベストだったかどうか、わからない」といい出したら人は何も選択できないし、結果を評価することもできない
¥ 人が結果論を語るときは必ず罠がある。
過去の選択によって「あのとき、この選択をしたのは大正解だった」という評価が10年後逆転し、「あれがそもそも失敗だった」と思うかもしれない
※「人間万事塞翁が馬」の考え方に似ている
上記を鑑みても過去の記憶に囚われるならくよくよ悩んで現状に甘んじるという性癖だからそうしているだけのこと
怒りを鎮めるには1つ上のゲシュタルトをつくる
人間は利害の一致する人間(仲間)から受けた裏切りに対して憤りを感じる
裏切られたのは自分の責任と考える
内省(自らを客観的に見て評価すること)は前頭前野による評価で理性的 -> 怒りが鎮まる
IQを高めれば怒りを鎮めることができる
前頭前野と大脳辺縁系はどちらかが必ず主となる(同時に主となることはない)
前頭前野優位にするにはひとつ上のゲシュタルトを作る
つまりロジックで考える(その行為によってIQが高まる)
なぜ自分から望んで選択したことに後悔はないのか
結果に対してわざわざ悪い評価を下すのはエフィカシーが低いから
定義
エフィカシー: コーチング用語で自己のゴール達成能力の自己評価のこと
エフィカシーが低いと選択を他人に頼る
自分の選択なら結果が期待通りでなくてもそれがベストだと評価することができる
どんな結果もプラスでとらえる
人は必要のないことを不安に思っている
不安の例
景気や経済に対する先行き不安 -> 経営者に多い
芥川龍之介は「ただぼんやりとした不安」で自殺
石油枯渇はデマ = エネルギー不変の法則から考えて人類がエネルギーを利用できなくなることはない
日本は内需国
円高はメリット
円高デフレで日本から海外への所得移転が進んでいると言われているが、それ以上のスピードで日本企業は資源などの海外資産を我が物にし、日本に富を還流させている
国内で発生する経済的なパラダイムシフトは日本人全員に影響があるので条件は同じ
悩むのは無意味
最善の努力をしているのに会社が倒産したり解雇されたら
そのときはその時と割り切る
¥ 以上に対して個人が先回りして不安になる必要などひとつもない
少しでも安心なことを自分で用意する
過去の記憶を娯楽にする6つの方法
悲しみ - 「私のせいであの子を死なせてしまった」
悲しみを娯楽にする: 悲しい出来事を思い出して、悲しみに暮れることはその人にしかできない娯楽
ただし、悲しむために時間を費やしてはいけない
映画館に悲しい映画を観に行くのと本質的には同じ
¥ 嫌な記憶を娯楽にするためにはエフィカシーを下げるやり方でそれを思い出さないようにし、逆にエフィカシーを上げる方法を身につける
思い出す(セルフトーク)ときに「自分がバカだった」「許せない」と思うとエフィカシーを思いっきり下げてしまう
セルフトークはエフィカシーが上がるようにやる。e.g. 「おれはよくやった」「おれはすごいやつだ」
code:_
記憶との付き合い方の基本
1. 結果論で過去の出来事を後悔しない
2. 前頭前野を働かせ、それを評価する
3. 前頭前野側からの介入に上達する
4. わざわざ自分に不利になるように統合しない
5. 後悔は無意味ということを知る
6. 過去の記憶は全て娯楽にする
これら6つを身につければ、どんな嫌な記憶でもその人を惑わせたり拘泥させたりするほどの力をまず持ち得ない
それでもなお過去の記憶に苦しんでいるならそれはその人の自我がそうさせている
第3章 あなたの自我があなたを不幸にさせる
希薄な人間関係がイライラの原因になる理由
情報過多がイライラの原因ではない
欲しい情報がいくらあっても私たちは困らない
本を読みすぎて死んだ人間はいない
人間の脳は必要な情報しか受け止めないので情報の洪水は問題にならない
重要ではない情報は馬耳東風で入ってこない
情報が津波のように押し寄せても私たちを物理的に押しつぶすことはない
なぜ、知識によって重要度が変わるのか
煩悩: 人間が抱く個人的な欲望
釈迦 -> 人間は煩悩の目で見ており、生の世界など見ていないことを看破
^認知科学が誕生した現代において非常に先進的な思考
認知科学誕生以前は、物理世界という本物の世界と仮想世界という偽物の世界があり、いかに後者を前者に近づけるかを問題にしていた
認知科学誕生以後、物理世界と仮想世界の差はないということが明らかに
なぜか?視覚野から入ってきた情報が本当にその通りに見えているかといえばそうではないし、逆に視覚野から入ってきてない情報でも脳が「見えた」と認識するから
つまり、私たちの認識は情報として認識しているだけであってその情報に物理的な実体があろうがなかろうが脳にとってはどうでもいいということになる
人間はいま臨場感が上がっている世界を現実と認識しているだけ
釈迦はこの認知科学の本質を2500年も前に言い当てている
人間が煩悩の目で世界を見る = その人の知識が世界を見ている
e.g. 目の前にある焼き物が唐三彩である場合でも、唐三彩自体を知らない人はそれがどれだけ高貴な人の埋葬品に使われたかなどはわからない
= その人の知識が重要度を決め、人は重要度の高いものしか認識しない
¥ 目の前の世界は、その人が重要だと思うもので成り立っている
果てしない煩悩が満たされない気持ちを作る
つまりつまらない記憶ばかりを繰り返し思い出してイライラする原因は情報過多ではない
イライラの原因は自分で重要度を高めすぎているものが多すぎること
重要度が高くなければ認識にのぼってこない
他人の煩悩を自分の煩悩と錯覚する
人間は自らの欲望を満たしてやることで成長する
しかし実際は現実世界では欲しいものを得た結果に満足せず、成長もせず、不満と不安に苛まれる人が多い
なぜか?自分の煩悩ではないものを他人に刷り込まれているから
e.g. 車のCM: 車とは関係のない壮大な景観や美女、ブランド犬が登場
マスメディアが人のエフィカシーを狂わせる
重要だという情報がイライラさせる
「重要ですよ」と散々刷り込まれ、それが前頭前野のパターンになってしまった人も、自分がなぜそれを重要度が高いと思っているのかがわからない
これがイライラの原因とされる情報過多の正体
他人の刷り込みで作られる自我
自分が重要だと思っている情報の正体は自我
「あなたはどういう人ですか?」という問いに対して
「私の名前は〜で」「私の生まれは〜で」「私の仕事は〜」と自分にとって重要だと思う情報を並べる
自分で自分に対して行った定義が「自我」
自我 = 重要性の評価関数
自我 = 宇宙全てのものを重要性の順番で並び替える関数のこと
他人と自分とでは重要だと思っていることの順番は違う = 自我も違う
自分が重要だと思っている情報が外から刷り込まれる = 自我も他人によって作られる
※ 電通による刷り込みの例が記載されている
自我を変えるにはテレビを捨てる
一方的にテレビが流す情報は、すべて誰かが視聴者を利用する意図をもってお茶の間に提供されている
「誰が、何を、いつ、どこで、どうした」という情報を新聞やインターネットで読むほうが圧倒的に重要
第4章 悲惨な体験をトラウマにしない
クライシスサイコロジーが嫌な記憶を消す
定義
クライシスサイコロジー: 危機管理心理学。著者がこれを活用する目的 -> 大震災の被災者たちが後々PTSDにかからない方法を専門家に伝授すること
緊急時、平常心を保つ4つの方法
※
クライシスの際に何が起こるか? @ CDC(疾病管理予防センター)の策定するガイドライン
が記載されている
生命の危機は「ファイト・オア・フライト」で防ぐ
「ファイト・オア・フライト」 = 人間が危機に瀕した際の状態
e.g 山歩きしている際に熊と遭遇 -> 瞬間的に逃げるか戦うかの判断を本能的にしないと死んでしまう
「ファイト・オア・フライト」状態では前頭前野が行う理論的な思考はむしろ邪魔になり、直感的な判断が得意な扁桃体などの大脳辺縁系に働いてもらう必要がある
つまり「ファイト・オア・フライト」状態ではIQが下がる
最悪の状態を知ることが心を安定させる
危機発生時には文脈情報を提供する(e.g. 「半減期とは何か」「モーメントマグニチュードとは何か」)
文脈情報によって「ファイト・オア・フライト」の大脳辺縁系優位の情報処理を前頭前野優位に変える
夢が恐怖を増幅させる仕組み
脳が受ける情報は知的情報と情動的情報
情動的情報では前頭前野を利用していない
知的情報なら前頭前野を使ってその情報を繰り返せば長期記憶化する(= 勉強)
情動的記憶が長期記憶化するのは夢
夢はコントロールできない
記憶が長期記憶化するために必要な期間は通常3ヶ月から半年、場合によっては1年(最短なら1〜2週間だが稀なケース)
トラウマをとるには高度な脱洗脳テクニックが必要
トラウマは特殊な変性意識状態
変性意識が生まれる状態 ≒ 高度な催眠を受けている状態
変性意識状態では特定の記憶にアクセスしやすくしたり、逆にアクセスしにくくしたりということができる
第5章 うつ病は一瞬で治る!?
不満が精神を蝕む
人生を謳歌したいなら何事も自分に都合よく統合することが必要で、これはあらゆる精神の健康の秘訣と言える
統合は自分の脳がやっていることなのでコントロールできる
自分は100%悪くないという身勝手な考えに凝り固まっていると自分に都合よく体験や出来事を統合することはできなくなってしまう
自分に都合よく = 自分が100%正しいという頑なな考えを捨てること
自分は悪くないとか、正義は自分にあるという考え方をしがちな人は、人生の様々なシーンで局面をうまく運ぶことはできない
何か思い通りにいかないと他人のせいにするから
「あの人が悪い」という主張 -> あの人は自分ではないので自分の思い通りに動くはずがない
不満が膨らむ -> 不満は人間に緊張をもたらす
結果、大脳辺縁系の活動が優位になり、前頭前野の活動が抑えられ、心身共に不活発に
うつ症状やうつ病は一瞬で治ってもおかしくない
著者のうつ病の定義: ハッピーでない状態が継続すること
ハッピーな人でうつ病になる人はいない
自分でハッピーではない状態をやめればうつ病は治る
うつ病診断で安堵する人
会社勤めでうつ病になる人は100%仕事が原因
会社のことを考えるだけで拒否反応が出る(不登校児童の学校への連想と同じ)
うつ病になると大手をふって会社を休めるから都合がいい
うつ病の人は好きでうつ病になっている
仕事が原因でうつ病になっている人への簡単な解決策 -> 嫌な仕事を今すぐやめること
自分を責めているようで、いないうつ病患者
自己責任という考え方がうつ病の特効薬
「自己責任だ」と考える人は解決の難しい大問題が目の前に現れても逃げることなく問題に取り組む
自分で行った選択の結果は常に最高の結果
ベストの結果をいつでも得られる
「過去がこうだったからこうしよう」 <- こういう現状維持はダメ
なぜ、「自分はすごい」と思っている人にうつ病はいないのか
ベストな選択ができない人はその人のエフィカシーが低いから
エフィカシー = 自負心・自己の能力の自己評価
自分の能力を低く評価しているため、新たなアプローチで取り組もうという考えが起こらない
周囲にエフィカシーを下げる人がいる(「お前には無理だよ」「夢見てるんじゃねえ」)
親や教師に多い
いい大人になったんだからそういう人物に影響を受け続けているのは自分が悪い
自己責任でベストな選択をするときにドーパミン(行動を促すホルモン)がでる
ドーパミンが出たらセロトニンもでる -> うつ病解消へ
ミッドエイジクライシスもエフィカシーの高さで克服できる
更年期障害でホルモンバランスが崩れる -> うつ病になりやすくなる
加齢がエフィカシーを下げる
21世紀、「苦しい」「辛い」「怖い」「悲しい」は娯楽になる
悲しい記憶(辛い記憶・怒りの記憶・喜びの記憶)に囚われる必要はない
囚われない方法として記憶そのものを消したり忘れようとしたりする必要はない
単にその記憶を娯楽として楽しめばいい
過去の喜怒哀楽は現在の自分とは関係がない
必要もないものも娯楽にして楽しむ
人類はもう髪の毛を必要としていない(今では頭が禿げているという理由で死ぬ人は一人もいない) -> 髪がファッション・娯楽に
情動を娯楽にコントロールする
喜怒哀楽の情動的記憶は「そうしよう」と思った瞬間に娯楽になる
自分でその認識を持つ = 自分の記憶について自分の認識を自分の力で変えられないということはない
第6章
情動を消し去る3つの方法
code:_
1. 高い抽象度で考える
2. 嫌な出来事の記憶に、「嬉しい、楽しい、気持ちいい、清々しい、誇らしい」という情動感覚を結びつける
3. 脳を自己発火させる
抽象度を上げれば情動はなくなる
脳は生物と共に進化してきた臓器で、脊椎動物ならどの生物もよく似た脳の基本構造を持っている
脳幹・小脳・大脳からなっていて、それぞれの大きさが違うだけ
爬虫類を底辺としてだんだん高等な生物に上がっていき最後に人間に進化した
人間の大脳が最も発達していて、大脳新皮質と言われる新しくできた部分が特徴的
進化とともに脳が処理する情報の抽象度が上がってきた
抽象度をあげる = 端的に言えば嫌なことといいこととの差がない
「嫌なこと」と「嬉しいこと」はひとつ上の抽象度で考えるとどちらも同じ「情動」
抽象度を上げれば善悪さえもない
抽象度を上げると、あらゆるものを超えた認識が生まれる
元不良の国会議員の話
不良だった青年時代がいいか悪いかは未来が決める
現状がこうだというのを今いいか悪いかを決めることはできない
つまり未来にならないとわからない = 時間を超えている
今この場でいいか悪いか決まらない = 空間も超えている
¥ いま個人としてどんな状況にあろうとももっといい未来を実現すればいいということしかなくなる
いま悪い出来事が起こったということは、未来にいい出来事が起こったと同じだと認識することができる
因果は未来にしかない。未来の因果で現在の善し悪しが決まる。
時間・空間を俯瞰してみる
if の世界はあれこれ考えても全く意味はない
現在の自分は過去のすべてによって成り立っている
未来の自分は現在を含めたすべてで成り立っている
情動的記憶が長期にわたると嫌な記憶の囚われる
どんな時でもプラスの情動を出す
不利で耐え難い出来事と、それとはまるで関係のない過去のプラス情動感覚を結びつける
扁桃体は前者の記憶の増幅を弱々しいものにする
「嬉しい、楽しい」をアンカリングしておく
「嬉しい・楽しい・気持ちいい・清々しい・誇らしい」という情動感覚をそれぞれあらかじめ用意しておく
嫌なことを思い出した時に、すぐにバーンと引っ張り出せるように訓練をしておく
プラスの情動感覚の取り出しをより確実なものにするためアンカーとトリガーを用意しておく
何かアクセサリを身につけておいて、プラスの情動を想起する際に触る癖をつける
自己発火をすれば、幸せになれる
定義
発火: 脳のある部分が活発に活動すること(宗教の信者によく見られる)
前頭前野内側部の眼窩腹側内側部というところに洗脳すると発火する場所があり、そこが気持ちよくなって幸福感に包まれる(= 宗教のツボ)
アファメーションで自己発火する
定義
アファメーション: 人生のゴールを達成するための道具
アファメーションを毎日毎晩繰り返すことで発火パターンを作る
人間はその時に重要だと思っていることしか見ることができない(スコトーマ)
e.g. カクテルパーティー効果
リラックスして趣味に取り組めば前頭前野が活発になる
精神安定の方法 = 自らの力で、無理なく、いつでも前頭前野が働く状態を作っておくこと
恐怖や不安に怯える人や怒りの感情に支配される人に共通していることは前頭前野を働かせるために必要な2つの最低条件を欠いていること
2つの条件 = リラックスしていること、抽象空間に対する興味を持つこと
緊張状態 = 交感神経優位 = 大脳辺縁系優位 = 前頭前野が働かない
前頭前野が働かないとIQは上がらない
IQは人間がリラックスしている時しか上がらない
人間は論理的に言えば朝光を浴びてから15〜16時間後に眠くなる
光を浴びた時に睡眠物質のメラトニンが消える
それから15〜16時間後にふたたびメラトニンが作られるから
嫌な気持ちは消せるのです
IQを使うリラックスできる趣味が重要
https://scrapbox.io/files/63659e98ee27fb001d906da4.png https://amzn.to/3fCYKUk