自由の余地
自由の余地
なんでいまさらこの本を訳すわけ?
Elbow Room : The Varieties of Free Will Worth Wanting(MIT Press, 1984)が本書の原著である。
原著が出版されてから36年もたって、いまさらこの翻訳を出すなんて、あんた何考えてんのと言われてしまいそうだ。ちょっと言い訳が必要かもしれない。私はなぜ本書を訳したのか。
その理由はきわめて単純だ。デネットの著作の中で本書がいちばん好きだから。そして、本書がいちばん重要だと思うから。デネットの書く本はどんどん長くなってきた。それは、心理学、神経科学、認知科学、計算機科学、動物行動学、生物学、進化学などなど幅広い分野の科学的知見をどっさり援用して、読者を説得(誘惑)しようとすると同時に楽しませようとしているからだ。本書は、まだその「重厚長大化傾向」というか、サービス精神が本格的に発揮される前に書かれている。それだけに、デネットの哲学のやり方、あるいは「思考のすじみち」といったものが、素直にむき出しに提示されている。
じつは、デネットの哲学の基本的立場もその方法も、今日までほとんど変化していない。変化したのは本の厚さ。本書は、デネットの個性的な哲学観、立場、方法が最もシンプルに力強く示された著作だ。だから、「いちばん重要」なのである。そして、私はその哲学観、立場、方法が好きだ。それらに大きく影響されてきた。だから、「いちばん好き」なのである。
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