自然の諸相
自然の諸相
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フンボルトの中南米探検行は6年の準備をかけ1799年に始まり、5年の歳月を費やした。彼は、地形や気象、地磁気などを機器測定した科学者であると同時に、ゲーテとの交遊からうかがえるように自然を深く愛好する人でもあった。「長い乾季のあと…草原の情景は一変する」「爽やかな雨を告げるのは、遠くの雷鳴である」「大地の表面が水でうるおされるや否や、かぐわしく匂う草原は多種多様なスゲ科植物、円錐花序モロコシ類、多種多様な禾本科植物で覆われる」。自然の全貌を絵画のように描きだしたこの科学的エッセイは、新しい旅行文学としても人気を博した掌編である。
この本の目次
草原と砂漠について
オリノコ川の滝について―アトゥレスとマイプレスの急流地帯
原始林における動物の夜間生活
植物観相学試論
さまざまな地帯における火山の構造と作用の仕方
生命力あるいはロードス島の守護神物語
カハマルカの高地―インカ皇帝アタウァルパの旧首都
アンデス山脈山の背からの南海最初の眺望
初版への序言
人生の激浪から身を救うことのできた人」は喜んで私に従い、密林のなかへ、果てしのない大草原をたどり、アンデス山脈の高い山の背へ赴くことであろう。彼に語りかけるのは、世界にこだまする次の合唱である。
山々の上には自由がある。納骨堂のにおいは
澄みきった大気のところまで昇ってこない。
人間が苦しみを引きずってこない限り、
世界はどこでも満ちて欠けることはない
(シラーの戯曲『メッシーナの花嫁』第四幕第七場からの引用)