私小説のすすめ
私小説のすすめ
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私小説は日本特有のダメな文学なのか? 今や作家として私小説を発表する著者が、私小説に関するこれまでの「通説」に反論し、私小説擁護を宣言する、挑発的文学論! 私小説は日本独自のダメな文学、ではない! 私小説は西洋にだってたくさんあるし、多くの有名作家が私小説からスタートしたのだ。しかも、文学的才能がなくても書け、誰もが一生のうち一冊は書きうる小説である。なぜ私小説は誤解され、蔑まれてきたのか?
これまでの通説に反駁し、私小説擁護を宣言する、挑発的文学論。
目次
まえがき…………7
第一章 私小説とは何か…………11
「小説の書き方」は百年前から/さまざまな「自分のことを書いたもの」/
本のジャンル分けはかなりいい加減/私小説の本道は自己暴露/
恋愛をめぐる「情けなさ」を描く/小田原事件をめぐる作品の出来/
「事実の変形」の失敗例と成功例/私小説の醍醐味とは/
日本の私小説を歪めた志賀直哉/随筆作家たちの随筆小説/虚構小説の難しさ/
小説と物語/もっとも藝術的なる文藝は詩/売れなかった自然主義小説/
みんな私小説から始めた/私小説こそ真の純文学/「私小説は日本独自のもの」の間違い/私小説は「社会化」されるべきか/モデル小説をめぐって/なぜ「勘違い」は起こったか/意外な作家たちの私小説/非私小説作家たちの作品の力/結論・私小説は立派な文学形式だ
第二章 私小説作家の精神…………69
私小説家、私小説を語る/「自分で納得しないものは出せない」/
「銭になる小説は書けないたち」/通俗小説を書くと干される/「ぼくはぼくの道を行く」/私小説をめぐる状況/事実の力強さ/文藝はゴシップである/作りものの贋物より私小説
【おすすめ私小説】…………90
第三章 私小説批判について──中村光夫、田山花袋に敗れたり…………93
戦後本格化した私小説批判/中村光夫の私小説への両義的姿勢/
「時代の趨勢」で私小説批判者に/『蒲団』は生きている/中村光夫とその家族/
中村光夫はなぜ『蒲団』を憎んだか/不出来な小説/社交的ゆえの失敗/
恋愛論を語れない作家?/中村光夫と前近代文藝/世代と「愛」を相対化する視点/
矛盾の多いおかしな論争/色男・中村光夫/色男は失恋男を理解できない/
『蒲団』否定の異常な情熱/二葉亭と花袋についての「二重基準」/
外・漱石も自然主義と無縁ではなかった/そして『蒲団』は生き残る
第四章 現代の私小説批判──大塚英志の場合…………139
私小説は迫害されていない?/「小説の書き方」は役に立たない/
「文章読本」も役に立たない/テーマは深く考えなくていい/
「小説の書き方」、賛同できることとできないこと/私小説を書くためのいくつかのアドバイス/「学者学」は宗教みたいなもの/文学無知、柳田依拠の私小説批判/片想いに冷淡?/恋愛に無関心だった?柳田/『蒲団』を目の敵にするのは
第五章 私小説を書く覚悟…………171
文学的才能がなくても/時を経てこそ書きうるものもある/モデルの問題/私小説の倫理/辛いことこそ書く意義がある/「主人公」に対する倫理的批判/私小説家のモラル/
この小説は虚構か事実か?/モデル小説の難しさ/ためらいながらも、「作家」です/
作家事始め/活字になった処女小説/受けた批判について/作家としては不遇だけれど
あとがき…………214