眞鍋淑郎のノーベル物理学賞受賞について
眞鍋淑郎のノーベル物理学賞受賞について
気候学でノーベル物理学賞とは?
眞鍋さんの業績は、その受賞理由「地球温暖化を予測する地球気候モデルの開発」からわかるとおり、未来の気候の予測・解明です。受賞の報道では、CO2増加による気温上昇を予測した功績ばかりが大きく伝えられていました。しかし、眞鍋さんの業績はもっと大きく、気候学に、さらには地質学にまでシミュレーションという新しい科学の世界を拓いたことにあります。
気候学、地質学とシミュレーション
未来の世界を現実の世界と比べることはできないので、できるのは現在と過去だけなんですね。眞鍋先生もそのことはとてもよくわかっていらっしゃった。だから、過去に起こったと言われている、今からは想像もつかないようなある大きな変動をコンピュータ上で計算させて、地質学者が持ってくる実際に岩石に記録された過去の記録と合うかどうか、ということを検証されたんですね。この研究で、眞鍋先生は世界的に注目されることになりました。
古気候学
ミルティン・ミランコビッチという古気候学の巨人がいるんですが、彼は気候変動というものが過去にあったということに初めて気がついた。ではその気候変動を引き起こす原因は何だろうと考え、それは宇宙空間で起こっていること、つまり太陽と地球の位置関係が変わることだというふうに考えていった。これは、地質学と天文学を結びつける業績だったわけですね。 ミルティン・ミランコビッチ
地質学と天文学を結びつける
ニュートンの万有引力の法則もそうです。それまで別々の学問分野だった物理学と天文学の間に橋を架けたという意味で本当に巨大な業績だった。そういうようなものと比べたくなるような話です、眞鍋先生の仕事というのは。 ニュートンは物理学と天文学の間に橋を架けた
地質学にコンピューターサイエンスを組み合わせて、岩石だけではない第2の新しい証拠の示し方というものを作り上げた業績が巨大だと思います。だからこそ眞鍋先生の名前を聞いたときに、それは本当に順当だと思ったし、それを物理学に位置づけたノーベル賞委員会の見識は素晴らしいと思いました。
眞鍋先生は、コンピューターという角度から古気候学に大きな突破口を開いた人ですけれども、地質学の方からそれをやった人もいて、その人たちにも本当にノーベル賞をあげたかったなという思いはあります。
「世界一スパコンを使う男」「世界一ぜいたくにコンピューターを使った男」
眞鍋は研究のため、時代に伴うコンピューターの進歩とともに、常に最先端のコンピューターを駆使して先駆的なモデルを次々と発表した。研究費用として40年間で合計約150億円を費やしたうち、その約半分がスーパーコンピュータの使用料であり、年間あたりでも2億円近い出費をスーパーコンピューターでのシミュレーションのために行っていた。このことから、「世界で一番スーパーコンピューターを使った男」「世界で最もぜいたくにコンピュータを使った男」と称される。