灰野敬二とNHK-FM「バロック音楽のたのしみ」
灰野敬二とNHK-FM「バロック音楽のたのしみ」
ニューヨークのファンデーション・フォー・コンテンポラリー・アーツ(Foundation for Contemporary Arts/FCA)は2023年2月15日、2023年度の助成芸術家を発表し、音楽家の灰野敬二がロイ・リキテンスタイン賞(Roy Lichtenstein Award)を受賞することが決定した。
FCAは芸術家個人の支援を目的として、作曲家のジョン・ケージと、画家のジャスパー・ジョーンズによって1963年に創設された非営利組織。
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Q. 灰野さんの演奏はハーディーガーディーなどを使用したり、近代的、非西洋的な楽器や音楽へのアプローチも多いですね。それは近代的な音楽へのある種批判的なスタンスをあらわしているのでしょうか。
A. 批判というか、近代的な音のあり方というのがすごく限定された範囲の中で認識されているということに違和感があります。これは自分が独自に解釈していることですが、中世の音楽には楽器それぞれの役割に分割できない音の要素があると思います。例えば、パーカッションはリズムを演奏するだけではなく、メロディーのような要素を演奏できるし、逆に弦楽器をパーカッション的に使えたりもします。それぞれの楽器には分割できない音楽の要素というのが中世の音楽には非常に強いように感じます。どの楽器の演奏者も対等であり、そのグループの中において中心と なる人間の存在は薄いです。
Q. いつ頃、どういうきっかけで中世の音楽を意識し始めたのですか。
A. 1973年ぐらいにミュンヘン古楽合奏団のレコードで聴きました。楽器の「サワリ」というのでしょうか、引きづり込まれるような音がそこでなっていました。そのレコードにはスターリングジョーンズという演奏家の中世音楽の演奏がおさめられていました。当時レコード屋でその音を耳にしたんですが、聴いたときに震えが止まらなくなりました。早速レコードを買って帰り家で聴いてみて、中世の音楽についていろいろ調べ始めました。ロックを聴いてきた人間にとっては中世音楽の文脈が良く分かりませんでした。
それ以来、朝早く起きてラジオでやっていたバロック音楽の番組を熱心に聴き始めました。それをオープンリールに録音して何度も聴きましたね。そういえばラジオはFMでしたし、自分の家は東京の中心から少し遠くにあったから、電波を取るのが大変でした。少しでも風が吹けばオープンリールにちゃんと取れないという(笑)。
Q. それは大変ですね、灰野さんが電波が悪いラジオを操作するようなライブがみてみたいですね (笑)。
A. 本当に大変でした。自分が演奏でエレクトロニクスを扱う際、人と全然違う扱い方になります。ラジオの電波を受信する為、非常に繊細なノブの動かし方を身につけたからです。そういえば、もっと後にはヴォリュームのノブをゼロから最大まで動かすのに1時間かけたりとか、そういう訓練もしていました。そういうこともあり、ダイナミックレンジということについては凄く気をつけています。これはこの年にならないと言えないことかもしれませんが、苦労しないと考えないことや得られないということも確実にあると思います。電波の悪いFMから も学べることがあります。苦労話でいえば、未だに海外のツアー先のイミグレーションでは苦労しています(笑)。でもまあ、そういうトラブルにあったこととかにインスピー レションを受けて曲のタイトルを考えるのですが。
以前は平日のみに同じ時間帯で『バロック音楽のたのしみ』(1963年4月1日から1985年3月29日まで)→一時中断し、『ミュージックカレンダー オルガンのしらべ』→『あさの音楽散歩』を放送→『あさのバロック』(1989年4月3日から2004年3月28日まで)の番組名で放送されており、20年以上にわたってバロック音楽の研究家である服部幸三、菅野浩和、皆川達夫が解説を担当した。
朝6時台のバロック音楽番組はNHK-FM本放送開始(1969年3月1日)以前の試験放送の頃から実に40年以上に渡り放送されていることになり、日本でのバロック音楽の知名度向上に大きく貢献した。
2011年度から『古楽の楽しみ』に改題された。
『古楽の楽しみ』(こがくのたのしみ)は、NHK-FM放送で毎週月曜から金曜の5時から5時55分に放送されているクラシック音楽番組である。
2022年度より、6時台がラジオ第2の英語の語学番組を同時生放送を行うため、放送時間が5時-5時55分に変更される。
「古楽」。それは古くて新しいメロディーの宝庫。
中世・ルネッサンスからバロックまで、アーリーミュージック全般を広くご紹介する番組、それが「古楽の楽しみ」です。
近年ますます研究が進み、新しい解釈による録音も次々に生まれている注目の「古楽」の世界へご案内します。