時間の本性
時間の本性
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誰でも知っているが改めて問われると答えるのに難しい問いがある。時間もその一つである。時間には量としての側面と、過去・現在・未来という様相の側面がある。前者はアリストテレス、後者はアウグスティヌスの考察が有名である。著者は量的な時間をベースに時間様相をも運動、変化、生成・消滅といった基本概念によって捉えようと試みる。その場合、鍵になるのが「現在」である。現在は存在の問題に直結しているから。ゼノンのパラドックス、マクタガートのパラドックス等を織り込みつつ、複雑な課題を緻密に解明する手ぎわは鮮かである。
目次
序論 哲学的時間論の課題
第一章 時計の時間──「速さ」なき「時間の流れ」
1 時計の針の「速さ」?
2 基準運動の「自己比率」としての時間
3 時計と自我
第二章 ゼノンのパラドックス──アキレスと亀の時計なき競争
1 アリストテレスの解決
2 擬似時計としてのアキレス
第三章 「現在」とは何か──実在に触れることの透明性
1 時間様相としての「現在」
2 知覚の透明性
3 共通感覚の「同時性」
第四章 体験の流れ──中心から湧き出す同心円
1 「もの」と「出来事」
2 「再認」と世界の「持続」
第五章 「過去」と「未来」──体験は大地を流れる
1 時間の基体としての「大地」
2 記憶としての「過去」、記憶の鏡像としての「未来」
3 ベルクソン
第六章 マクタガートのパラドックス──「地」なき「図」の迷宮
1 時間様相の自己矛盾?
2 批判的検討
第七章 時間と自由──自己の外部で自己を失わないこと
1 私の年齢は私のものか?
2 決定論と自由
註
あとがき