数学的真理の迷宮
数学的真理の迷宮
数学的知識はどのように成り立っているのか。 数学的真理と自然科学的真理を分かつものは何か。 数学に革命はあるのか。 『不思議の国のアリス』の数学観から始まり、 古代ギリシャから現代への懐疑主義思想との格闘をたどって、 これらの根源的問いに答えんとする。 目次
序 文
序 論 数学史のなかのルイス・キャロル
第I部 真理という迷宮──数学と懐疑主義
アリスにおける意味と無意味
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンとルイス・キャロル
ドジソンの数学的世界──絶対に確実なユークリッド幾何学
ドジソンが拒否した新しい数学的世界──近代の記号代数学
アリスの世界・再訪
ドジソン=キャロル的世界の行く末、そして言語ゲームとしての現代数学 第2章 ヴォワイヤン・パスカルの洞見──人間的知識の栄光と悲惨
人間の空しさ、恋愛の偶然性
数学者・事業家としてのパスカル
幾何学の精神と繊細の精神との相違
『幾何学的精神について』における人間的知性の偉大さと限界性
第3章 「何も知られないこと」──懐疑主義者の数学的理性批判
したたかな認識者、人間へのやさしさ
「私は何を知ろうか?」──モンテーニュの数学批判
「何も知られないこと」──サンチェシュの既成学問との闘争
古代懐疑主義の知恵──アグリッパによる五つの方式
第4章 「われ惟う、ゆえにわれあり」──デカルトの懐疑主義者への回答 哲学者と女性、そして真理
『方法序説』における「われ惟う、ゆえにわれあり」
『省察』と『哲学の諸原理』における第一真理
数学的真理復権のための議論の構造
「われ惟う、ゆえにわれあり」の意義──懐疑主義の転覆者としてのデカルト
デカルト哲学の策略──なおも強固な懐疑主義の要塞
第5章 「可能世界」というものの考え方──数学的真理のライプニッツ的救済
懐疑主義者の回答のやるせなさ
「公理を論証する」──ライプニッツの懐疑主義者との闘争
「われ惟う、ゆえにわれあり」という第一真理についてのライプニッツの所見
プラグマティスト・ライプニッツ?
永遠の「仮設」としての数学的真理
「可能世界」の知識としての数学的真理
迷宮からの脱出
中間考察 基礎づけのない多様な数学的知識──ウィトゲンシュタインにとっての数学的真理
はじめに
1.多様な数学体系の在り方を認容する「言語ゲーム」概念
──『哲学探究』の“自由主義”的でプラグマティックな観点
2.懐疑主義との格闘を経ての『確実性について』における数学観
3.プラグマティズムに傾いて懐疑主義からの脱出を図るウィトゲンシュタイン、
そして「歴史-内-存在」なる理解に伴う数学論
第II部 古代ギリシャにおける理論数学の成立と数学革命論
第6章 エウクレイデース公理論数学と懐疑主義──サボー説の改訂
はじめに/公理論数学と西洋思想
1.エウクレイデース『原論』と公理論数学
2.サボー説の概要とその説への部分的批判の試み
3.エウクレイデース公理論体系の哲学的起源
4.サボー説への代替案:広義の懐疑主義思潮とアゴーン社会
5.ギリシャ数学の思想史的-社会史的背景?──広義の認識論的懐疑主義
6.ギリシャ数学の思想史的-社会史的背景?──アゴーン社会
第7章 数学における革命とはどういうものか?
──トーマス・S・クーンの科学哲学の光のもとでみた数学的真理
はじめに
1.数学史の新しいヒストリオグラフィーをめざして
──クーンの歴史的科学哲学と数学史家のそれへの対応
2.クロウの1975年説の検討
3.準経験的で時間依存的知識としての数学
4.微分積分学以前の面積測定と接線法──アルキメデスからピエール・ド・フェルマーまで
5.微分積分法の基本定理の認識──幾何学的思考法 対 代数的思考法をめぐる5人の数学者
6.数学における真理と自然科学における真理との対照
7.数学における革命の概念
8.結論的注記
初出覚書
人名索引
事項索引
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