手で書くこと
手で書くこと
今年もモレスキン社製の横罫ノートブックを、ほぼ1冊使い切った。財布や電話と一緒に持ち歩けるように、サイズはポーチに入る小型のものだ。これが身近にないと、やや落ち着かなくなるくらいに僕はノートブックに依存しており、何かが閃くとそれを忘れてしまわないうちに、急いで紙面に書きつける。キーワードのような単語のときもあれば、アイデアが広がるままに、数ページにわたって展開されるときもある。原稿を書くときはパソコンを使うけれど、その基となるアイデアを組み上げていくときは、どうしても手書きでなければ駄目だ。
なぜ最初の段階で手を使うのか、自分のなかでは理由ははっきりとしている。原稿を書くときに準備もなくパソコンの画面に向かったのでは、せいぜい自分の小さな内面くらいしか出てこないからだ。そんなものを縦に掘りこんでいっても意味はなく、まずは手で基になるものを書いて自分の字を目で見ることで、初めて書く内容に対して責任と手応えを持つことができる。科学的なことはわからないけれど、パソコンの画面に現れる活字から受けるフィードバックと、ボールペンで紙に描かれる直筆から受けるフィードバックとでは、そのときの脳の使い方が異なっているように思えて仕方がない。