成功モデルをつくった人はそのモデルを壊せない
成功モデルをつくった人はそのモデルを壊せない
しかし、新しいビジネスモデルをつくって大成功させた経営者の在任期間中に、それを本人が変えるのは難しいと思います。なぜなら、悪いことに気づいていながら、どうにかなると期待してしまうからです。顧客も社会も変わり、ビジネスモデルが賞味期限切れになり、このままよくならないとわかっていても、そのビジネスモデルをつくって成功した人は、自分では変えられません。人間の業とは、そういうものだと思います。
画家のパブロ・ピカソのように、自分でつくったスタイルを自分で壊して進化し続ける人はごく稀です。ジャズトランペッターのマイルス・デイビスのように、画期的な奏法をつくり上げてもすぐに自分で壊し、また新たな画期的な奏法を構築して、たえず進化するミュージシャンはそういません。そのようなことができるのが、彼らが天才と呼ばれるゆえんです。しかしながら、ビジネスの世界で彼らのような天才はいるのでしょうか。
ゼネラル・エレクトリック(GE)は長く続く大企業ですが、トーマス・エジソンの創業から百数十年の歴史で11人しか社長がいません。ということは、単純計算で1人当たり10年以上の在任期間があることになります。ただ、その10年の在任期間中に自分がつくったビジネスモデルを、自分で壊した人はいないと思います。
ジャック・ウェルチは前任者のビジネスモデルを壊し、新たに「選択と集中」を断行しました。彼が力を入れた金融部門を解体し、製造業に回帰させたのが後任のジェフリー・イメルトです。
前任者が成功させたビジネスモデルを後任者が壊す形はよくありますが、自分でつくって自分で壊し、さらに新しいものをつくる人はほとんどいません。