情報の哲学のために
情報の哲学のために
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本書は、英米流の哲学の流儀にしたがって、情報にかかわるさまざまな概念が分類されて整理されている。データから枝分かれする見取り図を随所に入れてどのレベルの議論であるかを分かりやすく示しながら、数学的な情報だけでなく物理学的な情報もカバーし、さらには情報倫理までをも射程に収め「情報」の幅広さを伝えている。多種多様な情報を体系的に整理しようとする試みはあまたあるが、本書はフロリディの視点から複数の情報の結びつきを示し、一般の人たちを読者層として想定してコンパクトに書かれた案内書であるといえる。マクスウェルの悪魔やラプラスの悪魔、遺伝情報、ゲーム理論など、よく知られた例を使いながら書かれている。本書のタイトル『情報の哲学のために』のなかにわざわざ「ために」という言葉をつけたのは、本格的な情報哲学に入る前の段階のラフスケッチとみなせるからである。
目次
謝 辞
図一覧
表一覧
はじめに
第1章 情報革命
情報社会の出現
ゼタバイトの時代
第四の革命
情報圏(インフォスフィア)での生活
第2章 情報のことば
データにもとづく情報の定義
データについて理解する
アナログとデジタルのデータ
バイナリデータ
データまたは情報の種類
一次データ
二次データ
メタデータ
運用データ
派生データ
環境的情報
意味論的内容としての情報
第3章 数学的な情報
通信の数学的理論
冗長性とノイズ
通信の数学的理論が示唆すること
エントロピーと乱雑さ
第4章 意味論的な情報
事実的な意味論的情報
情報の有益さに関する分析
演繹のスキャンダル
バー=ヒレルとカルナップのパラドクス
第5章 物理学的な情報
マクスウェルの悪魔
量子情報
情報から現実がうまれる
第6章 生物学的な情報
遺伝学的な情報
神経科学的な情報
第7章 経済学的な情報
完備情報
情報の非対称性
完全情報
ベイジアン(ベイズ主義にもとづく)情報
第8章 情報の倫理学
新たな環境的倫理としての情報倫理
「資源としての情報」倫理
「所産としての情報」倫理
「対象としての情報」倫理
情報倫理に対するミクロ倫理学的な接近法の限界
マクロ倫理学としての情報倫理
〈解説に代えて〉
情報圏の構築に向けた複数のアプローチ――フロリディの情報論とネオ・サイバネティクス[河島茂生]
参照文献
索 引