大いなる聖戦
大いなる聖戦
英国陸軍特殊作戦部隊(SAS)での軍務経験を経て、サンドハースト陸軍士官学校戦史上級講師、国防省戦史上席研究官、デ・モントフォート大学軍事・社会学研究所客員教授、グリニッジ大学客員教授などを歴任してきたH. P. ウィルモット氏。軍事史・戦略史のエキスパートである氏による画期的な第二次世界大戦研究書である本書を、以下ウィルモット氏自身による解説で紹介する。
筆者は、さきの大戦で枢軸国側のみならず連合国側にも多くの違法で残虐な行為があったことを周知している。英米の戦略空軍は敗北必至のドイツに対して執拗に無差別爆撃を加えて多くの非戦闘員を殺傷した。ソ連軍は大戦末期にドイツの民間人に対して身の毛のよだつような蛮行を加えたうえ、「解放」した東欧に「共産主義」の美名のもと新たな圧政を敷いた。米軍による都市無差別爆撃と原爆投下、ソ連軍による満洲における民間人への略奪暴行虐殺と、降伏した数十万の日本軍兵士のシベリアへの違法抑留を経験した日本では、戦争の大義などいかようにでも立てられると考えられているのかもしれない。とりわけ、東南アジアにおける戦いが、日本の一部では「欧米植民地支配からのアジア諸民族の解放」という論調でいまだに語られる傾向が残っていることも筆者は理解している。また、戦時下のインドでは英国の失政から二百万を越える餓死者が発生した。その点で筆者の母国である英国が「傲慢な帝国主義国家」の筆頭であったことにも疑いの余地がない。
しかし、筆者は枢軸国と連合国の掲げた戦争目的を較べた時に、どちらにより普遍性があったかという点を重視する。とりわけ露骨な人種差別と自民族中心主義に基づく「劣等民族」の排除と殲滅を公言するナチス・ドイツが枢軸諸国の中核であったことを知れば、道徳的な優劣はおのずから明らかであろう。1919年のパリ講和会議の場で世界に先駆けて「人種平等」を唱えた誇り高い日本が、このような邪悪な勢力と結託したことは、平時では想像できないような合従連衡と権謀術数が横行した第二次世界大戦期にあっても、自殺的な矛盾であったと言わざるを得ない。その先に待っていたものは日本にとって惨憺たる結末であった。
すごくフラットな感触がある。フラットというか平等、フェア 読みたい