動物意識の誕生
動物意識の誕生
シモーナ・ギンズバーグ 著
エヴァ・ヤブロンカ 著
鈴木 大地 訳
われわれのアプローチは最低限の意識〔minimal consciousness〕への進化的移行に狙いを定める。またアリストテレスが二四〇〇年前に築き上げた目的論の枠組みとともに、十九世紀のジャン= バティスト・ラマルクやチャールズ・ダーウィンらに由来し、この二十一世紀まで発展的に情報更新されてきた理論にも基づいている。この理論は、分子生物学や発生生物学、古生物学、生態学やその他の生物学分野に新しい発展があるたびに順次アップデートされてきた。すなわち、進化理論である。われわれが生物界を理解するための、最も一般性の高い枠組みだ。生命や心に関するいかなる理論も、この〔進化という〕概念上の関門を突破しなければならない。ある生物学的理論(あるいは心理学的、社会学的理論)が突破できないとすれば、その理論にはきっと重大な欠陥がある。 最低限の意識
minimal consciousness
進化は生物学的探求の核心なので、新しい理論の妥当性を測る指標としても着想の源としても意識研究の枠組みに組み込まれていると考えるのは当然だ。だが実際には、ごくごく最近まで不可解にも抜け落ちていた。いまや意識を論じる科学者や哲学者の大半は、意識は進化の産物たる生物学的プロセスだと心得ているものの、意識の進化的起源が議論の中心になることはほとんどないのだ。事実、百年以上もの学術界の沈黙を経て、意識の進化を理解しようと真剣に試みる機運が再び高まったのは、二十一世紀になって十年が過ぎてやっとのことだった。概念的に難しいのもさることながら、意識の科学的な研究は可能なのかという懐疑論が一九九〇年代には優勢だったことが、意識の進化が軽視された重大な要因であったらしい。
進化は生物学的探求の核心
起源に注目する進化的アプローチをとる利点は明確だ。意識を欠く生物から最低限の意識を備えた生物への移行が、進化史のなかで「いつ」「どのように」起こったのかを特定できれば、それにかかわるプロセスや組織化の原理について、主観的体験の根本的性質を覆い隠してしまう派生的な〔構成要素の〕分離・統合があとから起こったとしても、それに惑わされることなく探究できるのだ。
意識を欠く生物から最低限の意識を備えた生物への移行が「いつ」「どのように」起こったのか
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