創発
創発
そして昔ここでも批判したけれど、創発的な秩序がなにやら民主的だという変なかんちがい。ある人は、ブログがなにやら創発的な世論形成につながる、という変な議論をしている。でもそんなことはないのだ。創発原理の一番の教えは、マクロな動きはミクロ動向の総和じゃない、ということだ。みんなが環境保護とか言えば社会が環境保護に動くわけじゃないのだ。そしてそれをきちんと考えた創発的な世論形成ってどんなものだろう? 要するにそれは、ミクロなインセンティブとちがった形でマクロが動くようにするわけだ。すると……
昔紹介したことがあるけれど、ハワイである開発業者が、マンション建設をエコロな環境保護論者に潰されそうになり、住民投票で決着となった。そこでその開発業者はカニのバーベキューをえさに人々を選挙に引き出し、サイレントマジョリティが投票するようにし向けた。開発業者は勝った。これはたまたま、すばらしい民主主義の実践だった。でも、これは悪用できる。ストレートに意図を言わず、別のインセンティブで人を動員することで目標達成をねらう手口。創発的な概念の活用は、下手するとこういう変な腹に一物を持ったエサでの釣り合いの横行にもなりかねない。
で、それがホントにそんなに望ましいことなんだろうか、ということなのだ。
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山形浩生