企業には幅広い責任がある
企業には幅広い責任がある
ミルトン・フリードマンが生きていたら、パニックを起こしているに違いない。米国ロビー団体ビジネス・ラウンドテーブル(BR)の会員企業経営者181人が、企業には幅広い責任があるとする声明に署名して、株主至上主義というカルト的な考え方に終止符を打つ方向性を示したのだ。企業経営者は、幅広い社会目的を宣言し、それについて結果を出すべきだというプレッシャーは大きくなる一方だろう。
BRは1981年に、企業は株主の利益と「他の関係者の正当な懸念」のバランスを取る必要があると宣言している。ところが「他の関係者」の懸念は、1997年にBRが「株主至上主義」というドクトリンを受け入れたとき、どこかに消えてしまった。つまり今回の声明は、1980~1990年代に「企業の唯一の目的は株主価値を最大化することだ」いうフリードマンの考え方が絶対的になる前の、常識的な企業目的の解釈が主流だった時代への回帰といえる。
CEOは平均的労働者の200倍を優に超える報酬を得ている。この格差を縮小する措置をとること(CEOの報酬を引き下げるか、平均賃金を引き上げるか、その両方かを問わず)
『エコノミスト』誌は、「180人の署名者のリストに目を走らせると、……多くは寡占的な業界の経営者だ」と指摘している。寡占企業であることは、株主には直接的な利益をもたらすかもしれないが、従業員や顧客、あるいは社会にとって最善の利益にならないのは間違いない。
その一方で、181人のCEOにはシンプルな問いを突きつけられている。「口先だけでなく、有効な行動を起こす意思があるのか」、と。