令和
元号: 令和
<歌番号>05/0815
<題詞>梅花歌卅二首<并序> / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧 鳥封縠而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以攄情 詩紀落梅之篇 古今何異哉 故而賦之于園梅 聊成短詠也
<原文>武都紀多知 波流能吉多良婆 可久斯許曽 烏梅乎乎<岐>都々 多努之岐乎倍米<大貳紀卿>
<訓読>正月立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ楽しき終へめ<大貳紀卿>
<仮名>むつきたち はるのきたらば かくしこそ うめををきつつ たのしきをへめ
<左注>なし
<校異>歌 <西> 謌 <西(訂正)> 歌 / 役 -> 促 <矢><京> / 詩 <細>(塙) 請 / 利 -> 岐 <紀><細>
<事項>梅花宴 作者:紀男人 琴歌譜 太宰府 福岡 天平2年1月13日 年紀 地名 植物 宴席
<訓異>むつきたち<寛>,
はるのきたらば,<寛>はるのきたらは,
かくしこそ<寛>,
うめををきつつ,<寛>うめをおりつつ,
たのしきをへめ<寛>,
紀朝臣男人 きのあそみおひと
生没年 682(天武11)~738(天平10)
系譜など 大人(うし)の孫。麻呂の子。宇美の兄。妹の奈賀岐娘は藤原仲麻呂の室。子に参議家守がいる。「紀氏系図」は子に兼貞を挙げ、その女子を平城天皇妃とする。
万葉集には大弐紀卿とある。
この歌は大宰師の大伴旅人(おほとものたびと)の邸宅で開かれた宴席で詠まれた「梅花(うめのはな)の歌」三十二首の歌のうちのひとつ。
天平二年正月十三日、大伴旅人は自らの邸宅に大宰府の主要な官人を招いて庭の梅を愛でる宴を開きました。
この歌はその席上で詠まれた三十二首の歌のうちの一首で、大弐紀卿が詠んだもの。
大弐(だいに)は大宰府の次官で紀卿については名は不明なようですが、おそらく紀男人(きのをひと)のことでしょう。
この「梅花(うめのはな)の歌」三十二首の歌は、三十二人が八人ずつ四群に分かれて詠みまわされたもので、万葉集巻五に収録されている順に詠まれたものとなっています。
つまりはこの紀卿の歌が一番最初に詠まれたわけですね。
歌の内容としては「正月になって新春がやってきたならこのように梅の寿を招いて楽しき日を過ごそう。」と、一群の歌の冒頭の呪歌として寿を招く目出度い内容の一首となっています。