下村脩のクラゲの発光タンパク質の発見
下村 脩(しもむら おさむ、1928年(昭和3年)8月27日 - 2018年(平成30年)10月19日)は、生物学者(有機化学・海洋生物学)。
学位は理学博士(名古屋大学、1960年)。位階は従三位。ボストン大学名誉教授、ウッズホール海洋生物学研究所特別上席研究員、名古屋大学特別教授。
身長は182cm。
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速報:ノーベル化学賞受賞:緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発
(協力:理工学研究部 若林文高・動物研究部 並河洋・植物研究部 細矢剛)
下村氏は1961年,アメリカ,シアトル郊外の臨海実験場で,オワンクラゲ(ヒドロ虫綱,Aequorea victoria,※1・※2)から,紫外線が当たると緑色に光る「緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein; GFP)」を発見しました。 ※1 和名でひとくちに「クラゲ」と呼ぶ時,そこには刺胞動物門のヒドロ虫綱・箱虫綱・鉢虫綱,また広義には有櫛動物門の有触手綱・無触手綱が含まれています。詳細はここでは割愛しますが,私たちに馴染みの深い大型で厚い傘を持つクラゲ,エチゼンクラゲやミズグラゲなどは鉢虫綱,お盆過ぎに海水浴場に現れるアンドンクラゲは箱虫綱です。
※2 オワンクラゲは日本沿岸でも春から夏に多く見られます。お椀を逆さに伏せたような形の傘を持ち,傘の直径は10センチ程度から,大きいものでは20センチほどになります。傘からは100本近い触手が伸びています。肉食で,傘の中央にある口を大きく広げて他のクラゲや小魚を丸呑みします。刺激を受けると傘の周辺部分が緑色に光りますが,この発光がクラゲにとって何の意味を持つのかは未だ判っていません。
それからおよそ30年後,チャルフィー氏のグループが遺伝子操作によってオワンクラゲ以外の体内にGFP遺伝子を導入し,他の生物の体内でタンパク質を光らせることに成功しました。チェン氏は更にその手法を発展させ,緑以外のさまざまな色でしかも効率よく光らせることに成功しています。 これらの成果によって生物体内の細胞内でのタンパク質の動きを視覚的に追うことが可能になり,細胞の機能や病気発症のメカニズムの解明に広く貢献しています。
GFPは発見当初,単に「綺麗なタンパク質」という程度の評価しか受けていませんでした。その評価が高まったのは発見から約30年後,GFPの形成に関わる遺伝子が同定され,今回のノーベル賞の共同受賞者であるチャルフィー氏のグループがその遺伝子を大腸菌や線虫の一種であるC. elegans(※3)の遺伝子に組み込んで,その体内で実際にGFPを発現させることに成功してからでした。チェン氏は,更にGFPの遺伝子そのものに手を加え,緑以外のさまざまな色でしかも効率よく光らせることに成功し,GFPの応用範囲を格段に広げました。 ※3 線虫の一種Caenorhabditis elegansは,多細胞動物として初めて全ゲノム配列が解読された生物です。体長は約1ミリと小さく,僅か1,000個程度の体細胞しか持っていませんが,脳に相当する器官を持つこと,有性生殖を行うこと,世代交代が早いこと,体が透明で内部を観察しやすいこと,ゲノムのおよそ1/3が人間と共通していることなど,研究対象として優れた特徴を多く持っており,多細胞生物のモデル生物として近年盛んに研究されています。