ボート競技における乳酸値測定の活用法
https://gyazo.com/6909c18e32751dafd407d98d2d6c59f0
このトレーニングコンセプトの乳酸カーブは、ローイングエルゴメーターを用いた漸増的運動負荷テストによって得られます。横軸に強度(Watt)をとり、縦軸には血中乳酸濃度(mM)をとります。 年間のトレーニングのプロセスは順に追っていきますと、冬期トレーニングでは、まずカテゴリーⅥとカテゴリーⅤを組み合わせながら長時間(30~120 分)のトレーニングをメインにしてLT(おおよそ乳酸2mM対応強度)の向上を目指し、さらに徐々にカテゴリーⅣを徐々に組み込んでいくことにより OBLA(乳酸4mM対応強度)のより大きな向上(①)を目指します。
なお、冬期トレーニングの期間に、カテゴリーⅥだけのトレーニングに終始してしまうと、場合によっては最高乳酸濃度が著しく低下してしまう現象(4~5mM以上の低下)がおこることがあります。冬期トレーニング期間での最高乳酸濃度のある程度の低下はネガティブに捉える必要はありませんが、著しい低下を起こさないように留意する必要があります(②)。
試合期に入れば、冬期トレーニングで養われた基礎的な持久的能力をベースにして“試合用の体力”を養っていくことが重要な課題になります。したがって、カテゴリーⅢ・Ⅱ・Ⅰのトレーニングを積極的に組み込むことによって最大乳酸濃度の向上(③)や乳酸カーブの乳酸4mMよりも高い部分のさらに右方向へのシフト(④)を目指します。
https://gyazo.com/917c60d3e2dd9bdc284bd22cbd95b84a
トレーニングは運動強度により大きく6つのカテゴリーに分けられます。 図の横軸はトレーニングの時間、縦軸は強度を示しています。 この強度は、2000mのレースタイムと血中乳酸濃度を主な手掛かりとして把握されています。
Ⅰは無酸素系の能力の向上を目的としたトレーニングの強度カテゴリーです。Ⅱはレースに直結する総合的能力の向上を目的としたレースを想定したトレーニングの強度カテゴリーです。Ⅲ~Ⅵは有酸素系の能力の向上を目的としたトレーニングの強度カテゴリーです。Ⅲ~Ⅵの4つうちでⅤが「基礎的な持久的能力を高めるためのトレーニング」のメインとなる強度カテゴリーで、冬期および試合期のトレーニング全体をとおして常にしっかりと取り組むべき強度カテゴリーとして位置づけられます。 一番低い強度カテゴリーのⅥは、回復トレーニング強度と呼ばれたりもしますが、Ⅴとともに基礎的な持久的能力を高めるのに有効であると考えられます。
われわれの経験では、Ⅴ・Ⅵのカテゴリーのトレーニングによって乳酸曲線の立ち上がりとして捉えられる乳酸閾値(LT)の向上が期待できます。
このⅤ・Ⅵのカテゴリーのトレーニングをベースとして、Ⅳのカテゴリーのトレーニングを加えていくことによりOBLA(血中乳酸4mM対応強度)のさらなる向上が期待できます。
そして、さらにこれらのⅥ・Ⅴ・Ⅳのカテゴリーのトレーニングをベースに、Ⅲ・Ⅱのトレーニングを加えることにより、最大酸素摂取量を向上させることが期待できます。