ナガサキ
ナガサキ
ヒロシマとナガサキ。日本に存在するふたつの被爆地は、核兵器廃絶という目標に向けて協調してきた。一方で「世界最初の」という頭書きがつくヒロシマに対して、ナガサキへの世間の脚光は控え目でありがちだった。それはしばしば「もうひとつの」「同じような」観光地としての位置づけでしかなかった。どうして異なる種類の核兵器がわずか3日後に使われなくてはいけなかったのか、という視点は日本でもしばしば欠けていた。また、広島への原爆投下の事実が周知されていれば、失われずに済んだ可能性のある命を救えなかったことの責任追及もされてこなかった。
国家の核政策を前に、はたして個人は何ができるのか。無力さを感じることは少なくない。しかし、本書を読んで確信をもつことができた。人は強く生き抜くことで、その人生を台無しにすることもできる国の政策さえ超越することができる。人の生きざまが他者の心を動かすとき、共感が波のように広がり、何かが生まれる。それは世の中を動かす原動力になる。本書が核大国アメリカで生まれ、アメリカ人によって読まれていることに、私は大きな希望を見いだす スーザン・サザードと谷口稜曄