セルフケアの羅針盤
セルフケアの羅針盤
根本国彰
クライミング・登山の専門院「そら鍼灸院」で日々クライマーの症状解決に取り組む鍼灸師。普段は治療院に、休日は岩場に向かう日々を過ごしてきたが、最近は外に行く時間が取れなくなってきたことが悩み。クライミングは主にトラッド、ルートを好む。
ストレッチを語る前に、まだまだ押さえておきたいことがある。関節の可動域だ。
股関節の場合、医学的な正常可動域は外転45度で、両方合わせても90度までしか開かないことになっている。
そこに股関節の屈曲や外旋、さらには骨盤や腰椎の動きを組み合わせることで股関節が開いているように見せるわけだ
それぞれの関節を、一方向でなくいろいろな方向へ動かす。Jリーガーが試合前に行なうウォーミングアップをイメージするといいだろう
ブラジル体操的な
ラジオ体操の動きも当てはまる。これがまさに動的ストレッチである
ラジオ体操って当時の運動科学の粋を尽くして国民の健康のために考案されただけあって、非常に優れていますよ
胸郭の肋間にある肋間筋は胸部の深層の筋肉なので、浅層の大胸筋や広背筋などに比べると意識しづらい。
この肋間筋は横隔膜と共に肺を動かす呼吸に関わっているので、半ば不随意筋のようなところがあるため、手足につながる筋肉のような“動かしている”感覚は乏しくなる。
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肋間筋は3層になっていて、外側の外肋間筋は、肋骨を引き上げて胸郭を広げ、息を吸い込む働きをする吸気筋。内側の内肋間筋は、肋骨を引き下げて胸郭を狭め、息を吐き出す呼気筋となっている。内肋間筋と、さらに内側の最内肋間筋の間には肋間神経や肋間動脈・静脈がある。
また、肋骨の引き上げ・引き下げは腕の上げ下げの動きにも連動している。腕を上げたときは外肋間筋が連動し、息を吸い込みやすくなる。その反対で、腕を下ろしたときは内肋間筋が連動するので、息を吐き出しやすくなる。この腕の動きと呼吸の連動については、ラジオ体操の終盤に行なわれる深呼吸の動きをイメージするとわかりやすいのではないだろうか。
この吸気促進に由来する酸欠状態を避けるためには、意識的に息を吐き出していく必要があるのだが、上級者が登っているのを観察してみると、いくつかの方法が見えてくる。
まずわかりやすいのがレスト姿勢だ。腕を楽にホールドにぶら下がり、片腕ずつ交互に下ろしながら呼吸を整えている。肺は胸郭の左右にあるので、片腕ずつでも下ろすことによって片方ずつの肺にたまった空気が換気され、酸素が取り込まれるようになる。ぶら下がっているほうの腕も脱力しているため、外肋間筋の強烈な収縮もない。