スキッフル
スキッフル
たとえば、ビートルズのルーツのひとつにスキッフルがあるのは有名な話だが、ではそのスキッフルとはどんな発展のもとで20世紀初頭のアメリカ南部からイングランドへと伝わり、何者によってそれがイギリス化されたのか。あるいは、アメリカ南部のストリングス・バンドからの影響がビートルズのどの曲において具体的に表出しているのか、そんなところまで著者は追跡する。曲のなかに引用されたラテンやカリプソ、もちろん黒人音楽との関係も詳細に記されている。
スキッフルの起源ははっきりしていないが、20世紀初めのアフリカ系アメリカ人の音楽文化にその源があると一般的に考えられている。スキッフルは、ニューオーリンズ・ジャズから発展したものだとしばしば説明されるが、その妥当性については議論がある。スキッフルという言葉では表現されていなかったにしても、即興的なジャグ・バンドによるブルースやジャズの演奏は、20世紀初期のアメリカ南部ではどこでも見られたことであった 「スキッフル (skiffle)」という言葉は、家賃を支払うために小額の参加費を課してパーティーをするレント・パーティー(Rent party)を意味するスラングのひとつだった。スキッフルが最初に録音されたのは1920年代のシカゴにおいてであり、南部のアフリカ系アメリカ人が北部の産業都市へ持ち込んだものであったと考えられる
比較的曖昧なジャンルであるスキッフルは、1950年代のイギリスにおけるリバイバルと、その中心にいたロニー・ドネガンの成功がなければ、ほとんど忘れ去られていたかもしれない。イギリスのスキッフルは、スウィング・ジャズから離れてトラッド・ジャズ(Trad jazz)へと向かう動きを見せていた戦後のブリティッシュ・ジャズ(British jazz)・シーンから生み出されたものである 60年代の英国ロッカーのほとんどが、ロニーの影響を受けている。 当時のイギリスはポール・アンカのような甘ったるい曲に溢れていて、 それにうんざりしていた若者たちが、 スキッフルに一斉に飛びついた。 70年代の中盤に、 皆がパンクに飛びついたのと同じ衝動感。