クロノス時間とカイロス時間
クロノス時間とカイロス時間
ギリシア語では、「時」を表す言葉が καιρός (カイロス)と χρόνος (クロノス)の2つがある。前者は「時刻」を、後者は「時間」を指している。
また、「クロノス時間」として、過去から未来へと一定速度・一定方向で機械的に流れる連続した時間を表現し、「カイロス時間」として、一瞬や人間の主観的な時間を表すこともある。内面的な時間。 ギリシャ神話には時にまつわる神が二柱ある。カイロス (Καιρός, Kairos) は一瞬を表す神であり、もう一柱のクロノス (Χρόνος, Khronos) は連続した時を表す神である。
カイロス(古希: Καιρός, ラテン文字転写:Kairos, ラテン語形:Caerus)は、ギリシア語で「機会(チャンス)」を意味する καιρός を神格化した男性神である。元は「刻む」という意味の動詞に由来しているという。キオスの悲劇作家イオーンによれば、ゼウスの末子とされている。
カイロスの風貌の特徴として、頭髪が挙げられる。後代での彼の彫像は、前髪は長いが後頭部が禿げた美少年として表されており、「チャンスの神は前髪しかない」とは「好機はすぐに捉えなければ後から捉えることは出来ない」という意味だが、この諺はこの神に由来するものであると思われる。また、両足には翼が付いているとも言われている。
「チャンスの神は前髪しかない」の神
クロノス(古希: Χρόνος, ラテン文字転写:Khronos, ラテン語形:Chronus)は、「時」を神格化したもの。シュロスのペレキューデースによって創作された神で、彼の Heptamychia に登場する。
神話時代が終わり自然哲学の時代に入り,そしてギリシア哲学が本格的に開花してからもクロノスという時間は哲学の主要な問題となっていった。
クロノスが以上のように専ら時間の量的意味に限定されて用いられてきたことから,元来は基準や節度という事物的意味ももっていたカイロスとの差別化,区別化が決定的となっていたのである。つまり
クロノスは物理的時間であり量的に計測可能な時間,
カイロスは意味時間であり感じる時間
となっていった。時間の意味に関する,うまい住み分けがここに始まった。言語をカテゴリー化して考える近現代の思考の枠組みからは,ある意味では大変に区別しやすく分かりやすいこととなっていったのである。