オリエンタリズム
オリエンタリズム
本書のもう一つのキーとなるのが「オリエンタリズム」である。序文で斎藤真理子が「世界文学論は依然としてオリエンタリズムの延長にある」と看破しているが、ポスト(ポスト)コロニアル文学に対する吉田の提言は重い。マヤ文学とはなにか定義をする時点で「オリエンタリズム的な感じがする」と。マヤ文学はマヤの文学について書くという制約を自らに課している限り行き詰まってしまう。しかしその枷から解放されるには、受容する側も読み方を変えていく必要がある。
この問題はアジアの国同士でも起こり得る。福冨の訳書には「訳者註」がごく少ないが、これは、東南アジアの文学には註を付けないと理解されないと考えること自体に「オリエンタリスティックなまなざしが入っているんじゃないか」という問題意識からだ。
オリエンタリズム(英: Orientalism、仏: Orientalisme)または逆オクシデンタリズム(英: reverse Occidentalism)とは、東方趣味・東洋趣味・異国趣味。「オリエント世界(西アジア)へのあこがれに根ざす、西欧近代における文学・芸術上の風潮」とされる。反東洋思想ともいう。または西洋の人々が東洋の人々を偏った見方で捉えようとする態度のことを指す。
オリエンタリズムは「世界を西洋と東洋に分けて考える考え方」とも、「二項対立」とも呼ばれる。
オリエンタリズムという語は、パレスチナ系アメリカ人の文学研究家であり、熟練したピアニストでもあったエドワード・サイード(※2)が1978年に発表した著書『オリエンタリズム』により、従来の東方趣味、東方研究という以外の語義を帯びるようになった。
サイードはこの著書で、そもそもオリエントやオリエンタリズムとは、西洋人が一方的につくり上げた概念であるとして、その概念自体を批判した。
さらに、サイードのこの著書は、オリエントの芸術を西洋的偏見なしに、それ自体として発見し、評価しようとする動きにつながっていく。
オリエンタリズムを提唱したエドワード・W・サイードは、1978年に出版した著書『オリエンタリズム』の中でこの言葉を最初に用いた。本書でサイードは、西洋の学問、文学、芸術の歴史を分析し、西洋が東洋の文化、歴史、社会をどのように表現し解釈してきたかに焦点を当てている。
サイードは、オリエンタリズムは植民地時代に形成された文化的・政治的な支配の形態であると述べている。そして西洋が東洋を異質で劣った「他者」として歪めて描き、合理的で文明的に優れた「自己」との対比として利用していると主張した。
さらに、オリエンタリズムは西洋の帝国主義政策を正当化するための手段であり、西洋のアイデンティティと権力を強化する役割も果たしていると主張した。