アメリカ哲学入門
アメリカ哲学入門
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教育的配慮のいきとどいた入門書であるとともに、アメリカ哲学を保守的・硬直的・静態的な定義から解放することをめざす、挑戦の書。ジョナサン・エドワーズ、建国の父たち、プラグマティストらに加えて、女性、黒人、ネイティヴ・アメリカンといったアイデンティティをもつ論者についても積極的に採り上げて、あらたな歴史観を示す。
【原著】Nancy A. Stanlick, American Philosophy: The Basics(Routledge, 2013)
目次
日本語版への序文
前書き
第一章 序論
哲学の分野
アメリカの哲学
結論と本書の構成
第一章の推奨文献
第二章 ヨーロッパ系アメリカ哲学の誕生
認識論、科学的知識、宗教的真理
形而上学:実在、意志、宗教
批判
結論
第二章の推奨文献
革命的思考
啓蒙とは何か
革命的認識論、形而上学、方法
革命的宗教哲学
革命的倫理学、社会・政治哲学
批判
結論
第三章の推奨文献
宗教、倫理学、社会・政治哲学
奴隷制度という問題
アメリカの女性の権利
批判
結論
第四章の推奨文献
第五章 ニューイングランドのトランセンデンタリズムと継続する改革の精神
トランセンデンタリストの形而上学と認識論
継続する改革の精神
批判
結論
第五章の推奨文献
第六章 プラグマティスト
プラグマティズムの本性
チョーンシー・ライトと進化論
プラグマティストの認識論と形而上学
宗教、倫理、社会的世界についてのプラグマティストの立場
リチャード・ローティと二一世紀のアメリカ・プラグマティズム
批判
結論
第六章の推奨文献
第七章 アメリカ哲学の最近の展開(第一部)
形而上学、認識論、科学哲学
ネイティヴ・アメリカンの哲学
批判
結論
第七章の推奨文献
第八章 アメリカ哲学の最近の展開(第二部)
倫理学、社会・政治哲学
個人とコミュニティ
アメリカのフェミニスト倫理学:個人、コミュニティ、権力
アフリカン・アメリカンの社会思想
批判
結論
第八章の推奨文献
訳者解題
用語解説
文献表
索 引
スタンリックはこうした傾向に抗い、(アメリカ)哲学を保守的・硬直的・静態的な定義から解放することを提案する。
ここで彼女が採用するのが、プラグマティスト的な視座である。すなわち、哲学の特徴は「人間の理解や行為に対して観念が影響を与えること」であり、哲学的観念は「現実、知識、そして善き生についての人間の理解や行為を駆動する知的原動力」(本書二頁)だとして捉え直すのである。 この拡張された定義においては、理論を主、実践を従とする枠組みは転倒され、力強い思弁に基づく活動によって社会変革を目指す行為をも、「哲学」という営みの一つの相貌として理解することが可能になる。
また、制度的な不正義によって高等教育を受けることができなかった女性や黒人の思想家のみならず、学術論文に代表される書き言葉を通じた形式的コミュニケーション手段によってではなく、口承によって知的伝統を表現・維持してきたネイティヴ・アメリカンも、哲学者として正当に名指されることになる。