「上質な睡眠を」と言われても、その「質」が難しい
「上質な睡眠を」と言われても、その「質」が難しい
まず、同じような眠り方をしていても睡眠の質の感じ方に大きな違いがある。寝ている途中でたった1回目が覚めただけで「睡眠の質がとても悪い、苦しい」と感じて受診する患者がいる一方で、2、3回目を覚ましても「年を取ればこんなものだろ」と平然としている同年代の人もいる。同じことが、寝つきにかかる時間や総睡眠時間などについても言える。睡眠の質を評価する物差しが人の主観(自覚)にはそもそも存在しないのである。 確かに健康な人で睡眠脳波を何度も測定すると、ぐっすり眠れた夜に比べて寝苦しかった夜では深い睡眠が減って中途覚醒が増えることが多い。つまり本人が感じる睡眠の質と客観データがある程度相関する。ところが睡眠障害患者ではこの関係性が曖昧になる。 例えば、慢性不眠症患者では自分で感じている睡眠(主観)と、睡眠脳波データ(客観)とが必ずしも一致しない。一致しないどころかトンデモなくかけ離れることがある。例えば自分では寝つくのに1時間以上かかったと感じても脳波上は10分程度で眠っていることもある(詳しくは第12回「不眠症の本質は睡眠時間の誤認である」を参照)