2025/11
taizooo.icon
top
https://gyazo.com/aafd6c88ba9abcc0e57249daa57ed1bd
https://gyazo.com/3bae41d044274115b20d51cdeb98459d
Lobsterr Letter vol.336 : Nostalgia as a Gift
ポスト・ナイーブ時代のインターネット
Mozilla Foundationの「ポスト・ナイーブ時代」のインターネットについての考察を紹介したい。
かつては「自由で開かれたウェブ」へのナイーブな理想が語られていたが、今やその理想はテクノ封建制やプラットフォームの横暴、アテンション・エコノミーという現実を目の前にして無意味になっている。この記事は文化をつくり直すには発想と構造の抜本的転換が必要であり、そのためには、コミュニティの価値観に即した小さな基盤である「ミニバース」を築くことが必要だと主張する。
ミニバースの事例としてニューヨーク発の共同所有音楽プラットフォームSubvertが紹介されている。創業者オースティン・ロビーは、アーティストの生計を支えるデジタル基盤を10年かけて模索している。彼は、2022年に「良心的なプラットフォーム」と見られていたBandcampがEpic Gamesに売却されると、ベンチャーキャピタルに依存する構造自体を変えない限り理念は守れないと痛感した。彼は2024年夏に宣言文を公開して、Subvertの開発を開始した。現在はアーティスト、インディー・レーベル、サポーターら1万人超が出資参加し、出資に応じた所有権と意思決定を共有している。もちろん成功や収益は未知数だが「所有の設計」を変えれば、意思決定や開発、コミュニティ関与の質が変わるという実証実験だ。
こうした「ポスト・ナイーブ世代」の試みは4つのレイヤーで従来の「ナイーブ」なインターネット異なる。(1)構造レイヤー:共同所有、(2)価値レイヤー:競争ではなく協働と収益分配、(3)設計レイヤー:アルゴリズム最適化ではなく人間の推薦で流れるフィード、(4)コミュニティ運営:分散型ガバナンスでIRLの変化に適応。
IRL
この記事ではこうした動きを表す事例として、ジョシュア・チタレラのポッドキャスト「Doomscroll」、IRL×デジタルのハブのTrust、学習と実験の場を提供するSchool for Poetic Computationなどが挙げている。
この記事の冒頭の「自由で開かれたウェブ」という理想を取り下げるべきだという主張はその通りだと思った。また、Subvertの取り組みはとても気になる。自分も早速、出資(100ドル)して創業メンバーの一人になってみた。
読書文化の衰退がもたらすもの
この『Cultural Capital』の記事は、18世紀に起きた「読書革命」がいかに近代文明を築いたか、そしてスマホ普及以後にいかにその基盤が崩れつつあるかについて論じている。
歴史を振り返ると、印刷文化は近代の知的エンジンとしての役割を果たし、冷静で批判的な知性を育てた。しかし、人々はSNSや短尺動画の虜になり、多くのデータが示すとおり読書の量は激減している。また、2010年代半ばにスマートフォンが普及した後、学生の学力を測る最も有名な国際指標であるPISAスコアは目に見えて低下している。
この記事が言う通り、印刷文化が可能にしたのは、書いて練り直し、反論に耐える論の構築だ。カントの大著を口頭で即興的に生み出すことは不可能だ。そして、理解するためにはそれを何度も読み直すことが必要だ。書物は叫ばないし泣かないが、それゆえに感情操作の抜け道が少ない。逆にスクリーン空間では涙や音楽や映像が思考をバイパスし、陰謀論や感情的なストーリーが説得力を持つ。この記事は、これが、かつての口承社会の「神秘的・情念的」な思考スタイルへの回帰につながるのではと懸念している。
また、印刷文化の衰退は、クリエイティビティにも悪い影響を与える。ポップアイコンのデヴィッド・ボウイやポール・マッカートニー、科学者のダーウィンやアインシュタインに至るまで、偉業の背後には大量の読書があった。今日のカルチャーでは、例えば音楽では曲が短く反復的になり、映画はフランチャイズ化し、また、革新的なイノベーションの数も減っているが、これは読書文化の衰退と大きく相関していることをこの記事は示す。
この記事は他にも、短尺動画がポピュリズムを促すことで民主主義にも悪影響を及ぼし、また、ビッグテックがアテンションと怒りを収益化する構造を「無知の推進」と断じるなど重要な議論を展開している。
こうした読書文化の衰退が今後止まることはなかなか考えづらい。それがポップカルチャー、政治、ビジネスなど多様な局面に大きな影響を与えるのだろうと考えさせられる記事だった。
todo
寄付すること(した)
Adventarは個人が趣味で運営しているサービスなのでこれまでもこれからも課金や広告などを導入することは考えていませんが、サーバーの運用費や開発費などをサポートしてくる企業や個人の方がおりましたら歓迎いたします。
サポートはGitHub Sponsorから受け付けています。 GitHub Sponsor以外で支払いがしたい、サポートしたのでこのページにロゴを掲載してほしいなど、サポーターに関するお問い合わせは以下にご連絡ください。
寄付額の増額をすること
インターネット・アーカイブは済み
$5 → $10
Wikipedia も済み
$5 → 1,000円
モーターファン イラストレーテッドの定期購読
twilog アーカイブインポートについて
2025 advent calendar 2025
https://gyazo.com/b1c9ba081e3c70132fc29e2a84949fd9
https://gyazo.com/4396ba0838a9723c0344fdb16d5addf4
人間にとっての音楽の3層構造
人類(生物、種)としての音楽
ビート
先験的、生得的、理性的、アプリオリ
民族(文化)としての音楽
メロディ
後験的、後天的、経験的、アポステリオリ
個人(体験、)としての音楽
つまり人生、ライフ、生活、日常
end