過去を復元する
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from 2021/07
過去を復元する
過去を復元する:最節約原理・進化論・推論
【書名】過去を復元する:最節約原理・進化論・推論
【著者】エリオット・ソーバー
【訳者】三中信宏
【刊行】1996年07月15日
【出版】蒼樹書房,東京
日本語版への序文
科学理論は観察データが支持するときにのみ受け入れるべきであると一般には考えられています。けれども、観察された現象と整合的な科学理論がただ一つではなかったとしたら、どうすればいいのでしょうか。科学者はどのような基準で、それらのなかからもっとも妥当な理論を選んでいるのでしょうか。単純性(simplicity)や最節約性(parsimony)が基準として求められるのは、まさにこのときです。単純なすなわち最節約的な理論ほど、より美しくそしてより真実らしくみえるという意味で、他の対立理論よりもすぐれていると考えられています。
訳者あとがき —— 「かみそり」を系統学的に鍛えること
体系学(systematics)とは、生物のもつ属性に基づいて多様な生物界を体系化(systematize)する学問分野です。体系化の規準をどこに置くかは昔から議論の的で、いまなお論争の火種になっています。過去30年にわたる体系学の論争史を知ることは、この学問分野の現在を理解するために不可欠であり、同時に科学史・科学哲学の格好のケーススタディとなっています(Hull 1988)。しかし、この論争史については、これ以上深入りしません。
体系化の規準として最も有効なのは生物間の血縁関係(系統関係)であると私は考えます。日本ではこの点についていまもなお頑強に抵抗する分類学者がいますが、彼らの反論の論拠は、多くの場合、説得力が欠けています。対象生物群の系統関係をまず始めに推定することから体系化が始まるという考え方は、今日多くの体系学者が受け入れている基本的立場であると私は信じています。その時点で入手できる最良のデータに基づいて系統関係をできるだけ正確に推定することは、狭い意味での体系学者だけでなく、一般生物学の研究者にとっても有用であることが立証されつつあります。
では、データに基づいて系統関係を推定するとは、いったい何を意味しているのでしょうか。いかなる前提が系統推定の背後にあるのでしょうか。そして、それ等の前提の妥当性はどのようにして示されるのでしょうか。今回翻訳した『過去を復元する』の中心テーマはそれです。現在のデータから過去の歴史を復元するという行為を、生物哲学・進化学・統計学の知識を駆使しながら、解明しようと試みています。とくに、現代の体系学の世界で、系統推定の方法論として広く用いられている分岐学(cladistics)に焦点を絞り、分岐学理論の根幹を支える最節約性(parsimony)の批判的検討を行ないます。
過去を復元する - 株式会社 勁草書房
地球上に分布する多様な生物たちをどのように理解すればいいのか。進化プロセスが生み出した系統関係をめぐり、生物学哲学、生物系統学そして統計科学からの議論が深まってきた。原著出版から20年。系統推定の意味を問い、妥当性を掘り下げた本書の意義は、いまなお色あせない。分子進化学の進展を経た現在こそ、ひもとかれるべき1冊。
目次
復刊によせて
日本語版への序文
序言
謝辞
第1章 生物学からみた系統推定問題
1.1 過去について知るためには
1.2 パターンとプロセス
1.3 対象と属性
1.4 形質不整合とホモプラシーの問題
第2章 哲学からみた単純性問題
2.1 局所的最節約性と大域的最節約性
2.2 2種類の非演繹的推論
2.3 存在論としての凋落
2.4 方法論としての批判
2.5 ワタリガラスのパラドックス
2.6 Humeは半分だけ正しかった
第3章 共通原因の原理
3.1 表形学の2つの陥穽
3.2 相関・共通原因・濾過
3.3 存在論からの1問題
3.4 認識論からの諸問題
3.5 尤度と攪乱変数の問題
3.6 結論
第4章 分岐学:仮説演繹主義の限界
4.1 生まれ出る問題
4.2 反証可能性
4.3 説明能力
4.4 仮定最小化と最小性仮定
4.5 安定性
4.6 観察と仮説の区別
第5章 最節約性・尤度・一致性
5.1 攪乱変数による攪乱
5.2 最良事例にもとづく2つの便法
5.3 統計学的一致性
5.4 なぜ一致性なのか?
5.5 悪魔と信頼性
5.6 必要性と十分性
5.7 終わりに
第6章 系統分岐プロセスのモデル
6.1 進化モデルへの要望
6.2 一致は近縁の証拠である
6.3 スミス/コックドゥードル問題
6.4 歴史への回帰
6.5 形質進化の方向性
6.6 頑健性
6.7 モデルと現実
6.8 付録:3分類群に対するスミス/コックドゥードル定理
訳者あとがき
訳者解説
参考文献
索引
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