誕生時のジャズとはこうだった
ともあれチューバ・スキニー『Nigel’s Dream』。このバンドが結成以来ずっとやっているのはストリートにあった初期ニュー・オーリンズ・ジャズ、それもまだレコード録音が開始されるより前のスタイルをそのまま現代に再現しているわけで、『Nigel’s Dream』でもそれは不変です。 Nigel’s Dream | チューバ・スキニー
レコード録音がまだはじまっていない時代の音楽がどんなだったかを知る方法はいくつもあると思いますが、ジャズは聴けなくちゃねと思うぼくのばあいは1940年代以後に活躍したニューオーリンズ・リバイバルの古老たちのLPでつかんでいました。あの時代の古老たちはみんなレコード産業確立前から現場で活動していたひとたちでしたから。
レコード録音以前
ニューオーリンズ・リバイバルの古老たち
そんなLPレコードの数々で、実はどんなファンも「あっ、誕生当時のニューオーリンズ・ジャズってこんな感じだったんだね」というのを知ったんです。キング・オリヴァーにしろサッチモにしろジェリー・ロール・モートンにしろレコードはシカゴなどに出てきてからのもので、やっぱり音楽性が変化していましたから。
サッチモ
チューバ・スキニーを聴くと、ああいったニューオーリンズ古老たちのレコードで実感していたようなレコード以前時代のニューオーリンズ・ジャズの、なんというか空気というか雰囲気というか香気とでもいうか、なんとも名状しがたくもたしかに感じるオーラみたいなものが間違いなくあるのを聴きとれます。
それこそがチューバ・スキニー最大の魅力。しかも初期ニューオーリンズ・ジャズが必然的にまとっていたまごうかたなきカリビアン・アトモスフィアがこのバンドの音楽にもあります。これこれここの音楽要素がこうで、と明示できるようなものではなく、なんとなくの熱みたいなものとして、そこにあるんです。
カリビアン・アトモスフィア
米国南部ルイジアナ州ニューオーリンズ市(New Orleans, LA)周辺で南北戦争終了時ごろ、解放された黒人やクレオール(黒人と白人のハーフ)らで始められ、後の多様なスタイルのジャズに分かれていった音楽の一つで、以後のジャズ音楽のおおもとになった形式。コルネット(または、トランペット)、トロンボーン、クラリネットなどの3管が中心となって、集団即興演奏をおこなったジャズの演奏スタイルが、その典型とされている
ルイジアナ州におけるクレオール (Louisiana Creole people)とは、1803年のルイジアナ買収によって米国の一部になる前の、フランス領ルイジアナ時代の移住者を先祖に持つ全ての人種及び異人種間の混血の人々、またはこれらの人々の独自の文化とクレオール料理を指す。