社会的ジェットラグ
社会的ジェットラグ(社会的時差ボケ)
実際、「ブルーマンデー」を経験している大部分の人では、そのために生活に大きな支障が出るようなことはほとんどない。気重だな、と思いつついったん仕事に出かけてしまえば、後は日々のルーチンワークの中で活発さを取り戻す。ただ、夜型傾向が強い人は少し事情が異なる。寝起きが格段に悪く、日中のパフォーマンスも数日低下したままで、時には抑うつ状態に陥ることもある。このような強い「ブルーマンデー」に悩む夜型の人々の体内では一体何が起こっているのだろうか 体内時計の「1日の長さ(周期)」は人によって異なり、その人の朝型夜型傾向に深く関わっている。私たちが特殊な施設で日本人約20名を対象に精密測定した体内時計周期は平均で24時間10分。人数が少ないと言うなかれ。この測定は非常に大変なのである。そのような少人数での測定値においても、23時間50分程度の短周期の人から、24時間30分超の長周期の人まで、40分以上の個人差が見られた。ハーバード大学が白人を対象に測定した結果も驚くほど合致しているので、周期の長さやばらつきに人種差はないようだ このわずか40分程度(より長い、もしくは短い人もいるだろう)の個人差が、私たちの寝つきやすさ、目覚めやすさに大いに関わっていることが明らかになっている。周期が長いほど夜型傾向が強く、社会的制約がなければ寝つける時刻と目覚める時刻は自然に遅くなる。遅れるのは睡眠時間帯だけではない。体温やホルモン分泌など睡眠や覚醒を支える生体機能リズムも全体として遅くなる(位相後退する)。 実は、今回紹介した夜型の「ブルーマンデー」の睡眠パターンは、10数年ほど前から時間生物学や睡眠医学で注目されるようになった社会的ジェットラグ(社会的時差ぼけ)と呼ばれるものとほぼ同じである。社会的ジェットラグに特有な内的脱同調と睡眠負債が持続すると、パフォーマンスの大きな低下やうつ状態、血糖コントロールや脂質代謝の異常などさまざまな不調を引き起こすことが知られるようになった よく知られているように人の睡眠習慣には大きな個人差がある。例えば、同年代でも眠りやすい時刻、寝ついた後の睡眠時間ともに4時間以上もの開きがある。それに比較して、登校や出社などの社会スケジュールはかなり画一的であるのはご存じの通り。当然ながら、求められているスケジュールに適応できない人々が一定数でてくる。先回取り上げた、朝型勤務で辛い思いをする夜型体質の人などはその代表格である。 望ましい睡眠リズムと社会スケジュールの不一致が続くと、心身のさまざまな不調を呈することが知られていて、そのような状態を社会的ジェットラグ(社会的時差ボケ)と呼ぶ。