橋は一方通行ではなかった
橋は一方通行ではなかった
研究の結果、アフリカ人のゲノムのうち約1700万塩基対は、ネアンデルタール人に由来することが明らかになった。しかもその一部は、ネアンデルタール人が直接アフリカに渡ったというよりも、ヨーロッパからアフリカに戻って来た現生人類がもたらしたようだ。
現生人類の初期の移動については、「アフリカを出たら二度と戻らなかったという説があります」とエイキー氏は言う。しかし今回の結果や近年の研究からは、その説が正しくなかったことが浮き彫りになる。「橋は一方通行ではなかったのです」
「パズルのすき間を埋める非常に良いピースです」とドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の計算生物学者ジャネット・ケルソー氏は話す。「きわめて複雑な全体像が見えてきました。遺伝子の流れは1つではなく、人類の移動も1回きりではありません。数多くの接触があったのです」
歴史のコチラ側にいるわれわれは、かつて人類はアフリカ大陸で誕生して、勇気ある何名かの人々がアフリカから脱出して世界に広がっていった、なんていう話を固く硬く信じているんだけど、そこに通れる橋があったとき、だれだって好き勝手にその橋を行ったり来たり出来るのは当たり前なのに、そんなこととは露ほども考えない。