大鏡
from 2023/03
大鏡
『この世をば〈上〉』(新潮社) - 著者:永井 路子 - 尾崎 秀樹による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
「この世をば」の執筆にあたって、作者は道長の書いた「御堂関白記」や作中にも登場する名筆で知られた藤原行成の「権記(ごんき)」、藤原実資(さねすけ)の「小右記」、あるいは「栄花物語」や「大鏡」などの古典を丹念に読みこなし、そこから多くのエピソードを拾いあげて、作品世界を創造しているが、そうした豊富な蓄積にもとづき、平安朝の人と社会をとらえ、従来のイメージを破ったところに、この作品の新しさがあるといえよう。
古典を読むシリーズの一冊として刊行された「大鏡」を「この世をば」とあわせて読めば、その理解はさらにふかめられることだろう。永井路子は学生時代、最初に「大鏡」を読んだとき、少しもおもしろくなかったのが、歴史小説を書くようになって読んだおりには、大人の文学の妙味に気づき、新鮮な感動を味わったという。こうした感想を冒頭において、著者は「大鏡」の内容を解説し、その読みどころを述べているが、それらをとおして彼女が「大鏡」の中の随所から作品の素材を得ていることが、あらためてわかる。
こうした解釈によって、この書は「大鏡」のよき入門書であるだけでなく、古典理解の新しい眼を開いてくれるが、それと同時に、「この世をば」をはじめ王朝を描いた各種の文学を読む上でも、多くの示唆を与えてくれるのではなかろうか。
大鏡 (古典を読む 11) | 永井 路子 |本 | 通販 | Amazon
https://gyazo.com/d72e4b719b207a3561766d34bf9c71c4
永井路子『大鏡』 : 藤原氏と古代史推進委員会
岩波書店の<古典を読む>シリーズ11『大鏡』です。